目下、日本への入国者は、現地(NY)出発前72時間以内に検体採取した陰性証明の取得が必要になる。ただ、米国と違うのは、日本到着後に14日間の自主隔離が求められることだ。ワクチン接種者への隔離免除制度は、日本はまだ未導入。従来規定と同じく、隔離期間中の公共交通機関の使用は禁止だ。夫妻は自家用車で都内の自宅に戻った。

NYで打ったのは日本未承認ワクチン

以上の通り、ツアーの概要を聞く限りは大きなトラブルなどもなく接種は済ませられるようだ。しかし、海外でワクチンを打つことによる問題点はないのだろうか。

ワクチン接種を啓発する看板
写真提供=土橋省吾氏
ワクチン接種を啓発する看板

日本のワクチン承認に関する現状をみると、米ファイザーと独ビオンテックの共同開発によるワクチンが先行承認され各市町村に配布されている。このほか、防衛省による集団接種会場で使われることになった米モデルナ製と、各国で血栓発生が取り沙汰されている英アストラゼネカ製のワクチン(接種は当面見送り)が5月21日に特例承認された。

NYで観光客向けに接種が進むJ&J製は、初の「1回接種で有効」なワクチンとして2月、米国で承認された。しかし日本での承認については3月2日、菅義偉首相が「調達の検討対象」と述べたものの、日本政府は同社とのワクチン購入契約はなく、承認申請も受けていないという。

J&J製のワクチンをめぐっては、接種した人に血栓が生じる事例が米国で複数報告されたことを受け、米疾病対策センター(CDC)など保健当局が接種を一時中止する勧告を出したことがある(現在は再開)。日本では未承認のワクチンを打つことで、今後自治体から接種の声がかかったときに問題視される可能性はなきにしもあらずだろう。

日本で接種証明書がもらえない?

もう一つは、世界各国で議論が進んでいる接種証明書(ワクチンパスポート)の問題だ。日本政府は発給の意義について、「経済の復興を左右するインバウンド客のスムーズな入国管理を実現するためのもの」と位置付けている。

発給の要件を満たすワクチンは当然、日本政府が承認した企業のものに限られる。今後J&J製ワクチンが承認されれば問題ないが、もし承認を見送った場合、米国など海外で未承認ワクチンを打った人にも接種証明書が発行されるかは未知数だ。

日本での接種の広まりは「先進国で最遅」と揶揄される中、「接種のための海外渡航」という新たなトレンドが生まれつつある。それでなくても、海外には150万人近い日本国籍者が暮らしている。日本未承認のワクチンを接種した人々をどう扱うのか、今後議論が必要になってくるだろう。