「40代以下の社員を多く抱えられているIT企業です。『グループに分かれて順々にNYに社員を送るので、接種のアテンドは可能か』という問い合わせでした。こうした声があるということは、いまの日本の現状では順番を待ちきれないという方が多いということでしょう」
接種手配+ホテル航空代で30万円ほど
土橋社長によると、「あっとニューヨーク」で申し込む際の料金は1人当たり900ドル(約10万円)。NYのワクチン接種は無料で行われているため、費用は日本帰国時に求められるPCR検査へのアテンドや空港送迎(専用車)に充てられるという。滞在期間は4泊6日を奨励しており、この間滞在するホテル代や食事、往復の航空券は別途かかる。
もろもろ込みで計算すると、1人当たりの旅行代金は30万円前後となろうか。夫婦や家族、グループならホテルや車代などのコストは応分できるので、1人分の費用はさらに下がる。
いうまでもなく、日本の旅行業界もコロナ禍で利用者が激減している。そんな中、「NYでの観光客接種可能」の知らせに飛びついた国内の旅行会社もある。
コロナ以前に行われていた3泊5日や4泊6日のNY観光ツアーのコンテンツを、観光の代わりに接種アテンドを入れて商品を売り出したい、と食指をのばしている日本の旅行会社もあるようだ。今後はNYの空港に降り立ったら、接種ツアー参加の日本人でいっぱいといったことが起こるかもしれない。
東京都在住のTさん夫妻は、外国人観光客でもワクチン接種を受けられるとの情報を知り、急遽NYへ飛んだ。
到着後すぐに接種…「本当に感無量」
夫妻は渡航前72時間以内にPCR検査を行い、陰性証明を取得。羽田空港から米国へ出発した。現在、日本からNYを目的地に米国へ入る場合の強制隔離や自主隔離は不要で、4月10日以降の入国者の隔離は強制から「推奨」にグレードダウンされている。
5月15日に到着し、「あっとニューヨーク」が手配した送迎車で空港から直接NY市内へ向かった。そのまま、中心地のターミナル駅に設けられた接種会場で予約なしで接種を受けたという。
50代のTさんは接種の見通しが立たない日本の現状に失望していたが、これで感染リスクと重症化リスクが減少し、仕事での海外渡航も行きやすくなり、「本当に感無量だ」と話す。
気になるのはワクチンの副反応だが、筆者と親しい開業医は「38.5度前後の発熱と、異様な倦怠感に襲われる人も多い」と説明。熱は48時間ほどで改善するといい、「早めに解熱剤を飲めば楽になる」としながらも、NY観光に取り組む際は「街の人々はもうマスクなしで歩いているが、接種者は感染対策に今まで以上に留意すべきだ」と警鐘を鳴らす。
帰国前に体調が良ければ、他人との距離をしっかりとって、散歩程度なら良い、と言ったところだろうか。