なぜ日本では多くの子供たちが「不登校」で悩んでいるのか。臨床心理士の武田信子さんは「子供を取り巻く環境を調整するだけで解決する場合がある。だが、日本ではカウンセラーにすら『環境に問題があるかもしれない』という前提認識がない」という――。

※本稿は、武田信子『やりすぎ教育』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

スマートフォンを操作する女の子
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いじめはどこの国でもあるが…

私は不登校や引きこもりの問題がほとんど起きていない海外の学校をたくさん訪問してきました。世界各国から日本に子どもの専門家を招き、日本の学校を見学してもらい、さまざまなコメントをいただきました。

アジア圏には日本に似た競争的な教育を行っている国がいくつかありましたが、それ以外の海外の学校では、多様な子どもたちが多彩な学習方法で学んでいました。先生や授業への不満をゲストに言うことも許されていました。多くの学校で宿題や画一的な評価はほとんどなく、受験も厳しくなく、生徒たちの比較は行われていませんでした。いじめはどこの国でもありましたが、不登校や引きこもりの現象はほぼありませんでした。

オランダのアムステルダム自由大学では、2006年に日本とオランダの教育の比較をレクチャーする機会をいただきましたが、日本の受験を取り巻く状況を説明すると、皆さん信じられないという顔をしておられました。

また、日本によく来ることがあるというカナダの教師教育者は、日本の学校教育についてはコメントすることができないし、何かアドバイスしようという気はないと首を横に振るのみでした。

ここでは、日本の学校教育の中で問題を抱えた子どもたちの事例(事実を改変して構成)をいくつか挙げてみましょう。