当事者のほとんどが岡村発言に無関心だった

——性の話題が炎上しやすい理由がわかったような気がします。コロナと性風俗での炎上と言えば、昨年、ナインティナインの岡村隆史さんがラジオ番組で「コロナが明けたら美人さんが風俗嬢やります」などと発言し、ニッポン放送が謝罪しました。

坂爪真吾『性風俗サバイバル』(ちくま新書)
坂爪真吾『性風俗サバイバル』(ちくま新書)

岡村さんが話したように、コロナのような非常時で、経済的に困窮した人が性風俗の世界に入ってくる人が増えるのは事実です。

あの発言については私も容認できませんでしたが、深夜ラジオでのタレントの発言をあそこまでたたく必要があるのかと違和感も覚えました。擁護派と批判派がいくら意見を戦わせても、議論を繰り返しても、いままさに苦しんでいる人たちは救われませんから。

私は大学時代から20年ほど、性風俗の世界にたずさわってきましたが、性風俗で働くことの是非に関する議論からは距離をおいて、基本的にスルーしてきました。

炎上騒動でひとつ興味深かったのは、性風俗店で働く女性や、関係者のほとんどが岡村さんの発言に無関心だったことです。

——当事者ではない人たちが盛り上がっていたわけですか?

そんな印象でしたね。これは岡村さんの発言に限った話ではないのですが、性風俗に関する投稿は意見が分かれて、バズりやすい。注目を集めたくて、あえて性風俗をテーマに発言する人もいる。

ただ騒動のさなか思いがけない動きがありました。

「ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン」のリスナーの方々が「岡村さんが非難されてばかりで、何も解決しない状況がつらいです」と風テラスにたくさんの寄付をしてくださったのです。

性風俗を肯定する。あるいは否定する。性風俗の是非をいくら問うても、困っている人は減りません。さまざまな意見があるのはわかりますが、それはいったん脇に置いておいて、現場で追い詰められている人を支えていく――それが、風テラスの姿勢なんですよ。

(聞き手・構成=山川徹)
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