「働かないおじさん」も若い頃は評価されていた
どんなに今まで仕事を評価されてきた人でも、ビジネスを取り巻く環境が変われば、お払い箱にもなるし、評価もされなくなってしまうのだ。
思い出してほしい。今では「働かないおじさん」とお荷物扱いされるバブル世代たちだって、昭和の時代は高く評価されていたことを。
彼・彼女らは「24時間戦えますか?」を合言葉に、長時間労働を元気にこなし、接待会食、接待ゴルフ、接待麻雀などの「会社のカネで遊べる」勤務時間外の仕事の付き合いもがんばり、経営者からも上司からも、はたまた社会からも大いに評価された人たちだった。
それがいつの間にか、「人材の不良債権」だのとお荷物扱いされるようになり、「働かないおじさん」がバブル世代の代名詞になった。おまけに、若手の給料を上げると「当然でしょ」と言われるのに、年長者はまるで給料泥棒のように言われてしまうのだから、たまったもんじゃない。
年を取るほど、若い社員よりも能力が低く、新しいことへの適応力が劣り、仕事に取り組む意欲が乏しくなる、と思われている。若いからといって仕事ができるわけでも、創造性が高いわけでもないにもかかわらず、だ。
このように、実に残念なことだが、働く時間が延び続ける一方で、ビジネスの論理から言えば年寄りは嫌われる。これも「あるがままの現実」である。
有名新聞社からついに消えた「囲碁クラブ」
数年前、某有名新聞社の人がこんな話をしてくれたことがある。
「うちには囲碁クラブがあって、月に2、3回、社員が駆り出されるんです。元常務とか、元専務とかの世話役です。過去の自慢話やら、説教やらを聞かされ、地獄のような時間です。社長もやめたいと思ってるみたいですけど、ほら、会長の手前、そうもいかない。行き場を失った元役員のための囲碁クラブとか、わけわかんないですよね」
……この囲碁クラブも、2年前にやっとなくなったそうだ。
「セキュリティが強化されて、社員以外に社員証(=入館証)を出すわけにいかない」というのが、表向きの理由だった。
今、35歳の会社員も、あと5年で40歳。希望退職のターゲットは今では40歳以上だ。若手にも容赦なく魔の手が伸びてくる時代は、もうすぐそこにある。
過去の栄光は正真正銘、役に立たない。社員証1枚で社内のすべてにアクセスできる技術革新が「おい、こら! 俺を誰だと思ってるんだ!」と振る舞う暴君たちをシャットアウトしたように、コロナ禍で一気に加速したリモート環境により、求められる人材、評価される人材は大きく変わる。