身近な通信ツールから、企業や国家の機微情報が漏れるリスク
大阪地検は3月に自社技術の機密情報を中国企業に漏らしたとして、積水化学工業の元社員を不正競争防止法違反罪で在宅起訴した。その元社員は情報をビジネス向けのSNS「リンクトイン」で漏洩していた。中国企業はスマートフォンの液晶画面に使われる「導電性微粒子」という素材をめぐり、リンクトイン経由でこの元社員に接触し、国際電話やメールなどでやり取りを重ねた後に中国に複数回招いていたとされる。
トランプ前米大統領がアリババグループが提供するスマホ決済アプリ「支付宝(アリペイ)」やウィーチャットの決済機能、その前には動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」とウィーチャットを禁じる大統領令に署名したのも、こうした身近な通信ツールからいとも簡単に企業や国家の機微情報が漏れる危険があるとの警戒しているからだ。
今回、テンセントの楽天への出資も「純投資」とされ、三井物産も「顧客の個人情報を管理するサーバーは日本国内にある」として中国への情報漏洩はないとしている。ただ、テンセントはゲーム配信やウィーチャットなどで取得した情報を蓄積するデータセンターを国内に持ち、その規模は日増しに大きくなっている。
日頃、家庭や職場で情報交換や決済、ゲーム、出前や配車などで何気なく使うスマホを通じて、テンセント経由で中国に情報が筒抜けになる。「スパイ天国」と言われてひさしい日本が、連携する欧米諸国から後ろ指をさされないためにも、さらなる対応が求められる。