約7割は選択的夫婦別姓に「賛成」

これらの問題を解決すべく、1980年代半ばから、多くの法律家、政治家、活動家が夫婦別姓を提案してきた。1996年に法制審議会が答申した改正案では、結婚する時に夫婦が同姓か別姓かを選択できる制度(選択的夫婦別姓)に加えて、兄弟姉妹の姓を統一するために、結婚する時に子の姓を母または父のどちらかに決めておくことや、すでに結婚している人も別姓を選択できることなどが提案された。

2017年に法務省が行った世論調査では、別姓を認めるように制度を改めても構わないと考えている人が42.5%と最も多い。結婚後も以前の姓を通称として使えるように法改正しても構わないと考えている人が24.4%で、夫婦は同姓を名乗るべきと考えている人は29.3%である。

また、2020年11月には、早稲田大学の教授と市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」が、全国の60歳未満の成人男女7000人を対象にネット調査した。その結果、「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」が35.9%で、「自分は夫婦別姓が選べるとよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」も34.7%。「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦も同姓であるべきだ」と回答したのは、14.4%のみだった。これは、7割が選択的夫婦別姓に賛成だと解釈できる結果だ。

名前は「その人の人格を象徴するもの」という判決がある

さらに、名前はその人物を他人と区別する符号ではなく、その人の人格を象徴するものであるとする判決もある。最高裁は1988年に、「氏名は、(……)人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するもの」とした。名前が人格権のひとつならば、自分をどのような名前で呼ぶかは、憲法の保障する表現の自由として保護されるべきである。

両手を緑の壁の背景に大きく開いて立っている光3 D レンダリング
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しかし、2020年の現在まで選択的夫婦別姓は実現していない。それは、夫婦が別姓になると、「家族の一体感がなくなる」という意見が根強いからである。「たかが名前」にこれだけ長期の論争が続いているのは、名前に日本の家族像が象徴されているからなのだ。

しかし現代は、「家族」の概念も多様化しており、国がひとつの家族の形を基準にすることに意味がなくなっている。2015年の国勢調査によると、夫婦と子どもからなる世帯は全世帯の26.9%に減少した。晩婚化と高齢化の結果、単身世帯が34.6%に増加し、「夫婦のみ」の世帯も20.1%になる。つまり、日本の「家族」の3割以上が「ひとり家族」なのだ。