熱心に仕事に取り組む人をみて、「自分は怠けている」と落ち込むことがあるかもしれない。しかし、それは誤解だ。脳外科医の菅原道仁氏は「脳の仕組み上、人間はもともと怠けるようにできている。怠け癖を使い分ければ、自分の強みや成長につながる」という――。

※本稿は、『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

日本のビジネスマン
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人間はもともと怠けるようにできている

「怠ける」という行為は、人類の「生き残り戦略」といえます。わたしたちは生命体ですから、まずなによりも生き残ることが最大の目的。そのためには、いざというときに備え、エネルギーの消費を抑えておく必要があります。

では、わたしたちの体の消費エネルギーの内訳がどうなっているかというと、じつは脳が消費する割合が非常に多く、なんと全体の約20%も占めています。ですから、生き残るためには、面倒なことを考えるといった、脳をたくさん働かせるようなことは避ける必要が出てくる。つまり、人類はもともと脳をなるべく働かせないように、怠けるようにできているのです。

たとえば、歯磨きをするときに、多くの人は「この歯を磨いたら、次はこの歯を磨こう」などと考えながら磨きません。それはもう習慣化されていて、ほとんどなにも考えずに歯を磨いているはずだからです。そのことがよく表れているのが、虫歯ができやすい場所です。右利きの人の場合、左側の歯のほうが磨きやすく、意識しなければ右の奥歯は磨きにくいもの。そのため、右利きの人は右の奥歯に虫歯が多いのです。

あのジョブズだって怠けていた

あるいは、いまは在宅ワークをしている人も多いと思いますが、毎日の通勤電車に乗るときにも、いちいち「○時△分の電車の□号車の×番目の扉から乗車しよう」なんて考えませんよね? 日常的に使う通勤ルートなら、家を出て会社に着くまで、それこそほとんど自動化されているはずです。

決断の回数、つまり、考えるという脳を働かせる回数を減らすことで、なるべくエネルギーの消費を抑えて忙しい毎日を生き抜くという我々の自衛策が、怠けるということなのです。

また、有名な話ですが、アップル社の共同設立者のひとりであったスティーブ・ジョブズは、いつも同じ服を着ていました。ジョブズは、同じ服を着ることで「今日はあのスーツにしよう、ネクタイはどうしようか」といった決断の機会を減らし、本当に大事な場面で間違いのない決断をするための脳のリソースを確保していたのです。「怠ける」というと悪いことのように思いがちですが、そうとは限らないわけです。