財産を持っている親が、信頼できる子どもに財産を託して管理してもらうのです。一番効果が発揮されるのは、認知症になった後。自宅などの不動産や、所有している現金の一部が既に子どもに託されているので、認知症になっても、子どもが財産を守ったり有効に使えたりするのです。

真っ先に検討するべきは「遺言」ではない

家族信託の目的の大半は、生前の認知症対策です。家族信託の契約内容では、亡くなった時に信託された財産の承継先を決めることができます。自宅は配偶者に、残った現金は長女と長男に均等に承継させるなど、遺言機能を付けることもできます。

私がかかわったケースでは、財産の承継先を100%決めています。つまり家族信託をすることによって、腰が重くて親がなかなか進めてくれない遺言となるものも結果的にできてしまいます。

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認知症対策をしたら最後に、3階部分の遺言も決めていきます。

大枠の財産を信託していれば、承継先が決まっています。一方で、信託をしていない財産もしくは信託できない年金の口座や、畑や田んぼなどの承継については遺言で指定すれば、所有している100%の財産の承継先を決めることができるのです。

「銀行で遺言の手続きをしたから認知症になっても大丈夫」と勘違いしている人に、よく出会います。遺言は、亡くなってから効力を発揮します。

100歳まで生きた場合は、100歳までは無力だということを理解してください。遺言だけでは、財産凍結は防げません。これからの時代は、真っ先に遺言の検討ではないのです。

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