専門職後見人が付いた場合は、毎月の費用がかかり、亡くなるまで続きます。次の費用が相場となります。

● 管理財産額が1000万円以下……毎月1万~2万円
● 管理財産額が1000万円超え~5000万円以下……毎月3万~4万円
● 管理財産額が5000万円超え……毎月5万~6万円

専門職後見人は、家族の意見や意向を基本的には聞いてくれません。

介護施設選びは、専門職後見人が決めます。財産状況は相続人(子どもなど)の立場でも、教えてもらえません。財産を孫に小遣いとして渡したり、贈与したりもできません。家を売りたい意向も、聞いてくれません。

であれば、後見人が専門職後見人にならなければいいのでは? と思うかもしれませんが、仮に家族が立候補して後見人になれたとしても、家庭裁判所の管理下に置かれます。後見(財産管理と身上監護)している事務について、定期的に報告する義務があるので面倒です。

高齢者の手を握る看護師の手元
写真=iStock.com/PIKSEL
※写真はイメージです

認知症対策をすれば、相続問題の9割が解決できる

私が認知症とお金の問題をこれまでたくさん見てきて、確信していることがあります。それは、認知症対策をすれば、相続問題の9割が解決できるということです。

今は人生100年時代に突入し、寿命が延びています。つまり、認知症になるリスクが高いのです。認知症になると判断能力がなくなり財産が凍結しますから、認知症対策が重要なのです。

相続の解決策となるものとしては大きく3つあり、これらで成り立つ「3階建て理論」というものがあります。1階が「任意後見制度」、2階が「家族信託」、3階が「遺言」です。建物を造る時と同じように、1階から順に積み上げていくという流れで、相続問題の解決策を考えていきます。

相続の解決策「3階建て理論」

1階から3階にあるものはいずれも、認知症対策にもつながっています。

まず最初に考えるべきは、1階の「任意後見制度」です。

任意後見制度とは、自己判断能力がある段階で、自分自身で後見人を選ぶことができる制度です。こうして選ばれた後見人を、任意後見人と呼びます。家庭裁判所が選ばないので、任意後見人には子どもなど家族と契約することができます。

ドイツでは認知症になってしまった約150万人のほとんどが、任意後見制度の手続きを既に済ませています。それに対し日本では残念ながら、この任意後見制度を使っている人が1%もいないのです。