感染症専門医に“エリート医師”がいないワケ

図表に、現在活躍する有名な感染症専門医の経歴をまとめた。舛添氏や上氏が指摘するように「東大医学部卒」のような王道ピカピカの“エリート医師”はいない。また、他大学を卒業・中退した後に医学部へ進学した医師が目立つ。留学経験者も多い。

現在活躍する有名な感染症専門医の経歴

近年、SNSやYouTubeで個人が直接発信することは多いが、感染症専門医もその中に含まれる。コロナ禍でZoomによるインタビューやテレビ出演も一般化したこともあり、海外在住医師や感染症病棟勤務中の医師でもメディア出演が可能になった。コロナ禍の前からブログなどでコツコツと感染症情報を発信していたような医師は、学閥や居住地に関係なく各種メディアから声がかかりやすくなった。

ただ、率直に言えば、コロナ禍の今は花形医師として脚光を浴びているものの、AIDSや新型インフルエンザと同じように感染の勢いが小さくなれば、顔や名前を忘れ去られてしまう感染症医も多いだろう。

つまり、感染症医の適性は、感染におびえない平穏な時代にあっても、研究や診療を継続できるような「飽くなき興味・研究スピリット」がある人ということになる。

逆に言えば、「名門私立中高→名門医大」で出世に意欲を燃やすような“白い巨塔”タイプや、自分のクリニックでしっかり稼ぎたいといったタイプよりも、例えば「地方国公立医大出身でコツコツ生物研究に没頭」するような人材が感染症専門医に向いているとも言える。

炎上した舛添氏の「落ちこぼれの人たちが行くところ」発言は明らかに軽率なものだが、彼が伝えたかったのは、「頭はいいのに、自分の好きな事柄や興味のある分野に傾倒するちょっと変わった人」というニュアンスだったのかもしれない。

コロナ第4波の大阪で救世主となるか?

ここ1年、感染症専門医としてメディアでコロナ解説をしてきた国立国際医療研究センターの忽那賢志(くつな・さとし)氏は、約20年前、医学生の頃から自身のブログで「くつ王」というペンネームで発信していた。現在、政府広報のコロナワクチンCMに出演している。コロナ対策分科会座長の尾身茂氏などと並んで「感染症医のアイドル」的存在の忽那氏が先日、大阪大学大学院医学系研究科感染制御学講座教授に内定した。

その大阪では、2021年4月から感染者数が過去最大を連日更新する第4波のただ中にあり、忽那氏の存在は大変心強い。これまで吉村洋文・大阪府知事の「うがい薬でコロナに勝てる」発言や、松井一郎・大阪市長の「市民に雨ガッパ供出」呼びかけなど、政治家リーダーによる医学的に間違ったトンデモ発言が目立った。

そういえば、2020年春の「第1波」の際、厚生労働省クラスター対策班の中心となり、「人との接触の8割削減」を呼びかけた「8割おじさん」こと、西浦博氏も北海道大学教授から京都大学教授になった。忽那氏と西浦氏が混迷する大阪府の感染症対策における良きアドバイザーとして活躍することを祈念している。

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