しかし最初から自分の作品を、広く世に問いたい場合もあるでしょう。

自費出版は止めも勧めもしませんが、儲かる作家になるつもりなら関わる必要はありません。数百万円を払ったところで、本当に出版社が商業出版としてデビューさせてくれるレベルの営業・流通・宣伝・販売は期待できません。書店での平積みなど夢のまた夢、いちおう棚差しで一冊置かれたという結果が待つのみです。

出版社は商品である書籍を段ボール箱に詰め、取次を経て書店に送るのですが、自費出版の場合、この段ボール箱の梱包すら解かれることなく返送されたりします。書店の棚は常にいっぱいで、売れる見込みのない本まで並べきれないからです。

出版エージェントによる売り込み代行

最初から商業出版を決める方法はないのでしょうか。それがあります。実は出版エージェントというサービスが存在するのです。欧米ではむしろ主流です。出版社の編集者を直接の取引相手とせず、エージェントがまず貴方の原稿を預かり、各出版社に売り込んでくれるシステムです。

ノートパソコンをチェックする男女
写真=iStock.com/chee gin tan
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日本ではまださかんではないものの、出版エージェントによる売り込み代行は、すでに開始されています。「出版エージェント」で検索してみてください。サイトで会社概要・取引先・出版実績などを詳細に確かめましょう。

出版エージェンシーは数万円の契約料と引き替えに、貴方の作品を預かってくれます。今後出版が成立した場合、どのような契約がなされるのか、最初の時点でよく聞いておきましょう。

日本の出版社は、まだエージェント制度に馴染みがないため、編集者が敬遠するとも言われます。しかしそれは2010年代半ばまでの状況であり、最近ではエージェンシーの売り込みに対応する担当者が、出版社の編集部側で決められていたりします。

エージェントは編集部を訪ね、担当者と会い、複数の作家の小説を売り込みます。担当者は自社で出版できそうな作品を選び、エージェンシーと出版契約を結びます。たとえそこで選ばれなかったとしても、エージェントは他の出版社をまわり、貴方の作品を売り込んでくれます。

経費がかからない電子書籍

貴方とエージェンシーとの契約料は、当初は数万円ですが、その後出版が決まったらどんな取り分になるのか、事前に説明を受けておいてください。作家デビューを果たした後のことも考えておくべきです。以降もずっとそのエージェンシーに在籍し、仕事をとってもらうのか、どこかの時点で独立するのか、前もってきちんと協議しましょう。

貴方の作品が小説投稿サイトで上位にランクされている場合にも、出版エージェントが声をかけてきたりします。しかしこれは応じないほうが賢明です。なぜなら貴方に対しては、出版社が直接商談を持ちかけてくる可能性があるからです。出版エージェンシーを利用するのは、未発表の作品を売り込む場合に限ります。

紙の本にこだわらず、電子書籍出版であれば、どなたでも即座に可能です。しかも自費出版とは異なり、経費がかかりません。出版社を介さず、電子書籍ストアのプラットフォームで、直接自分の作品を販売するのです。Amazonのサービス、KDP(Kindleダイレクト・パブリッシング)なら七割もの印税が受け取れます。