「お願いの姿勢」で来られると応援したくなる

私がLINEで広告営業の責任者をしていた時のことだが、サントリーが新商品の販促としてLINEでもスタンプなどいろいろと試みたものの、期待していたほどには成果が出なかったことがある。こんな時、イケてない企業は「お前の会社の責任だ。何とかしろ」とクレームを入れてくるところだが、サントリーを担当していたとある広告代理店からは次のような趣旨の連絡があった。

田端信太郎『部下を育ててはいけない』(SB新書)
田端信太郎『部下を育ててはいけない』(SB新書)

「LINEでもスタンプとかいろいろやっていただきましたが、キャンペーン対象であるサントリーの新商品が思ったほど売れていないらしいんです。それについてサントリーさんからクレームが来ているわけではありませんが、先方ご担当者さんもとてもお困りのようです。そこで、御社にお力添えを頂き、サントリーさんのために援護射撃ができないかなと思っています」

イケてない企業なら、ここで「こっちはお金を払っているんだぞ」ということを笠に着て「何とかしろ」と責め立てるが、サントリーのように「最初からお願いの姿勢」で終始一貫してこられると、一緒にプロジェクトを進めている関係者は、「何かお困りの時には、御社のために一肌脱ぎましょう」という気持ちになるものだ。

殺し文句「助けてください」が言えるか

「相手と仲良くなるには、お願いごとをせよ」といわれる。

たいていの人は「お願いを聞いてもらうなんて、申しわけない」という遠慮から、誰かに何かを頼むのを躊躇しがちだ。しかし、そこで勇気を出して頼んでみると、意外と簡単に引き受けてもらうことができ、その依頼をきっかけとして付き合いの輪も広がるということがある。

世の中は多くの人の関係性で動いている。つまり見方を変えれば、誰もが何らかの特技を持ち、誰もが頼まれたいことを持っているとも言える。「こういうことが苦手なので、助けてください」と頼むのは相手の長所を生かすフィールドを用意することになる。

真の意味で成果を上げることができるのは「お願い上手」の上司である。仕事はもちつもたれつの関係性でできている。上手に人を頼ることのできる上司はたいていの場合、抜群の成果を上げることができるのだ。

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