「この会社はすごい」と思ったサントリーのやり方

こちらの落ち度を一方的に責め立てるお客さまに対する対応で、私が「この会社はすごいなあ」と思ったのがサントリーのやり方だ。

サントリーといえば、昔から広告宣伝に力を入れており、開高健さんや山口瞳さんといった著名な作家たちも同社の宣伝部の出身である。創業者の鳥井信次郎さん時代の「赤玉ポートワイン」のポスターも、時代を席捲したクリエイティブとしてよく知られている。

同社は年に1回、新高輪プリンスホテルの飛天の間で、夏のビール商戦を前にテレビや新聞、雑誌、ネットメディアの関係者などを招いて決起集会を開いて社長自らが挨拶に立つ。次のような挨拶が毎年恒例の風物詩である。

「私たちは宣伝の力を信じています。宣伝活動はサントリー1社だけでは完結せず、メディアの皆さん、広告会社の皆さんのアイデアや力が必要です」

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写真=iStock.com/metamorworks
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「宣伝」の重要性を熟知している

サントリーの成功のいしずえは、今や世界からも高評価を受けるビールやウイスキーのブランドについては言うまでもないが、それと同じくらい「宣伝活動」が果たした役割は大きい。

社長は自社にとっての「宣伝」の重要性を熟知し、メディア各社と密接な協力体制を保つことを大切に考えている。この会における「宣伝活動の成功は、マスコミや広告会社など大勢の力があってこその賜物」という言葉を聞いて、関連企業は感激するはずである。そこに続けてトップはしっかりと、「軍資金もたっぷり用意しました」と付け加えるのだ。出席者にとって最もうれしい一言だ。

メディア関係者が会場で毎年こうした話を聞けば、「いつもお世話になっているサントリーさんのために、弊社としても何かしたい」と思うようにもなるわけだ。