夫婦といえども「適度な距離感」が重要
心理学で「ヤマアラシのジレンマ」という概念があります。寒さのなか、2匹のヤマアラシがいます。離れていると寒いので、体を暖め合うために体を寄せ合いますが、近づきすぎるとお互いの「針」が相手に刺さって、痛みを感じます。2匹は近づいたり離れたりしながら、お互いに傷つかない、ちょうどいい距離を見つけます。このたとえは、心理的な距離が近すぎると傷つけ合うことになり、適度な距離感が重要だということを教えてくれます。
「ヤマアラシのジレンマ」を知っていれば、心理的距離が近すぎると、夫婦喧嘩が起こりやすいこともよくわかるはずです。お互いに、相手のプライベートの時間を尊重したり、相手の欠点や失敗をゆるしたり、お互いを認め合う。そういう愛情を持った余裕のある対応をすることで、「あなたと一緒にいることは素晴らしい」「あなたがいてくれてありがとう」「あなたがいてくれて幸せ」という、オキシトシン的夫婦関係ができ上がるのです。
なお、結婚したらからといって、必ず「オキシトシン的夫婦関係」ができるわけではありません。それは、夫と妻、それぞれの「努力」や「歩み寄り」が必須なのです。それが、「あれやってほしい」「どうして○○してくれないの」と「自分が自分が」モードになって、相手への要求だけが増えていくと、夫婦関係は危ういものになっていきます。
結婚を「ゴール」と考えてはいけない
結婚とは何か? これまた重要な命題についても、私の考え方をお伝えします。
独身の人たちは、「結婚はゴール」という認識の人が多いはずです。実際に、「結婚」のことを「ゴールイン」と言ったりもします。しかし、それは完全に間違いです。
結婚は「ゴール」ではありません。結婚は「試練」です。あるいは、結婚とは「振り出しに戻る」ことなのです。それまで「恋人関係」で積み上げた「関係性」「愛情」「経験値」などが、「結婚」というイベントによって――つまり「夫婦関係」になったときに――どういうわけか全てリセットされてしまいます。完全に振り出しに戻るような状態です。
結婚した人は、「そうだよね」とわかると思います。完全に振り出しに戻る状態で、もう一度夫婦という関係をゼロから構築していく――それが結婚生活、夫婦生活です。その中で、いろいろと大変なことも起こるし、楽しいことも起こります。つまり、「試練」と言ったのは、「苦しい」「つらい」「たいへん」を夫婦で乗り越えることで、自己成長しながら、人生の階段を昇っていくということ。