スーパー、教会、生活保護の受給まで問題だらけ

一方、すでに青息吐息の観光業、飲食店、小売店も不満を爆発させた。去年は稼ぎ時のイースターとクリスマスがロックダウンで水泡に帰した。だからこそ今年のイースターに望みをつないでいたというのに、それも潰れかけた。

また、産業界は、木曜と土曜を祝日にするという話に憤慨した。工場を1日止めれば、莫大な損害が出る。いったい誰がそれを保証してくれるのか? 大型スーパーも戸惑った。土曜だけ店を開けと言われても、生鮮食料品のサプライチェーンはどうなるのか? 祝休日の大型トラックの走行には特別許可が要る。

ドイツ国民はメルケル政権の新型コロナウイルス対策に従い続けている(2020年4月18日撮影)
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2020年4月のロックダウンでは、スーパーだけがかろうじて開いていた

しかも、5日間の連休で水曜と土曜に買い物客が殺到すれば、その防疫対策には誰が責任を持つのか? 果ては、イースターの真髄であるミサをオンラインでやれと言われた教会関係者までが、強烈に反発した。

さらに大きな問題は、4月1日木曜が、本来なら生活保護費の振り込み日であることだった。それが祝日に切り替われば、振り込みは連休後になる。多くの貧困家庭は5日も待てず、死活問題となる。では、全国の役所が、振り込み日を1日前倒しにできるかと言えば、それも無理だった。

そんな理由が重なって、結局、メルケル首相はこれらの撤回を余儀なくされた。

専門家、各省庁不在の政策決定に批判

この謝罪発表の直後に行われた国会での質疑応答では、メルケル首相は野党の集中砲火に晒された。

普段は穏やかなFDP(自民党)のブッシュマン氏は、「あなたは密室で、ごくわずかな出席者だけで、真夜中に、実務者や専門家や各省庁の役人の意見を聞く機会を全く排除したまま、何百万もの人々の命に関わることを決定するという試みを、いったいいつになったらやめるつもりですか!」と声を荒らげた。

実は、このさまざまな問題含みの決定がなされた会議も、深夜に及んでいた。3月22日の午後2時ごろから延々と11時間半も続き、メルケル首相がようやく記者会見場に現れたのは、すでに日付の変わった深夜2時前。

真夜中の会議はメルケル首相の得意技で、未明の記者会見も珍しいことではない。これは、持久戦に強いメルケル首相が、自分の主張を通すための作戦だとも言われている。

ただし、このブッシュマン氏の質問は、単に、今回のイースター5連休うんぬんや、深夜に及ぶ会議のやり方などではなく、もっと本質的なことを意味していた。つまり、メルケル首相がこの1年間ずっと、議会の抗議も司法からの警告も無視して、首相と州首相の合議という、本来は立法機関として存在しない機能を使ってコロナ対策を決定してきたことへの抗議なのだ。