イースターはクリスマスと並ぶ最大の祝祭

3月24日、メルケル首相(CDU・キリスト教民主同盟)は、わずか30時間ほど前に決定したばかりのイースター(復活祭)の5連休案を電撃撤回した。全ては自分の誤りだったと認め、混乱をきたしたことを国民に謝罪したため、ドイツ人は驚愕した。

2021年3月30日、ドイツ・ベルリンで、英製薬大手アストラゼネカ製ワクチンの使用に関する記者会見を開くアンゲラ・メルケル首相
写真=AFP/時事通信フォト
2021年3月30日、ドイツ・ベルリンで、英製薬大手アストラゼネカ製ワクチンの使用に関する記者会見を開くアンゲラ・メルケル首相

本来なら、よほどのことでない限り謝罪などしないのがドイツ人だ。だが、国民の間では、これを誠実さの表れと見て、花丸をつけた人も多かった。さらに、メディアはこぞって、「ついにメルケルが弱みを曝け出した」などと書いたが、それは甘い見方だろう。

今回いったい何が起こり、なぜ、メルケル首相が謝罪する事態となったのか? イースターの5連休案とは何か?

イースターは、キリスト教ではクリスマスと並ぶ最大の祝祭だ。日付は毎年変わるが、ちょうど春が訪れる季節であるため、大人も子供も楽しみにしている。今年は4月2日が「イースターの金曜日」(祝日)で、これが十字架に掛けられたイエスを悼む日。その後の日曜と月曜(祝日)はイエスの復活を祝う。公式の休日の前後に有給休暇をくっつけて旅行に出たり、家族が集まったりと、移動が多くなる時期でもある。

息抜きさえできないのか…国民が猛反発

ところが、今回、撤回された当初決定の内容は、イースター休暇中、旅行はたとえ自分の州内でも禁止。人々の交流も厳しく制限され、会えるのは2世帯、計5人まで(14歳以下の子供は対象外)。さらに驚くべきことに、1日木曜と3日土曜を休日扱いで5連休にし(土曜は食料品店のみ開店可)、教会のミサはオンラインに切り替え、国民は静かに家でイースターを祝えというものだった。

筆者提供
ドイツは今年も寂しいイースターとなった

そして、夜が明けてこの報が知られるや否や、世間は大騒ぎになった。

ドイツの子供たちは、去年3月のロックダウン以来、ろくに学校に行っていない。春は規制が解除される前に夏休みに入り、秋になってから徐々に秩序を回復しようと思っているうちに、またロックダウンが始まった。

ここまで長期間になると、親がホームオフィスの傍ら複数の子供を見るのもすでに限界で、イースター休暇の小旅行が心待ちにされていた。他人と接触しなくて済むようにとキャンピングカーやキャラバンが売れ、イースター休暇中のオートキャンプ場はすでに予約が満杯だったというから、その息抜きさえ不可とされようとしていることに、国民が激しく反発した。