イースターはクリスマスと並ぶ最大の祝祭
3月24日、メルケル首相(CDU・キリスト教民主同盟)は、わずか30時間ほど前に決定したばかりのイースター(復活祭)の5連休案を電撃撤回した。全ては自分の誤りだったと認め、混乱をきたしたことを国民に謝罪したため、ドイツ人は驚愕した。
本来なら、よほどのことでない限り謝罪などしないのがドイツ人だ。だが、国民の間では、これを誠実さの表れと見て、花丸をつけた人も多かった。さらに、メディアはこぞって、「ついにメルケルが弱みを曝け出した」などと書いたが、それは甘い見方だろう。
今回いったい何が起こり、なぜ、メルケル首相が謝罪する事態となったのか? イースターの5連休案とは何か?
イースターは、キリスト教ではクリスマスと並ぶ最大の祝祭だ。日付は毎年変わるが、ちょうど春が訪れる季節であるため、大人も子供も楽しみにしている。今年は4月2日が「イースターの金曜日」(祝日)で、これが十字架に掛けられたイエスを悼む日。その後の日曜と月曜(祝日)はイエスの復活を祝う。公式の休日の前後に有給休暇をくっつけて旅行に出たり、家族が集まったりと、移動が多くなる時期でもある。
息抜きさえできないのか…国民が猛反発
ところが、今回、撤回された当初決定の内容は、イースター休暇中、旅行はたとえ自分の州内でも禁止。人々の交流も厳しく制限され、会えるのは2世帯、計5人まで(14歳以下の子供は対象外)。さらに驚くべきことに、1日木曜と3日土曜を休日扱いで5連休にし(土曜は食料品店のみ開店可)、教会のミサはオンラインに切り替え、国民は静かに家でイースターを祝えというものだった。
そして、夜が明けてこの報が知られるや否や、世間は大騒ぎになった。
ドイツの子供たちは、去年3月のロックダウン以来、ろくに学校に行っていない。春は規制が解除される前に夏休みに入り、秋になってから徐々に秩序を回復しようと思っているうちに、またロックダウンが始まった。
ここまで長期間になると、親がホームオフィスの傍ら複数の子供を見るのもすでに限界で、イースター休暇の小旅行が心待ちにされていた。他人と接触しなくて済むようにとキャンピングカーやキャラバンが売れ、イースター休暇中のオートキャンプ場はすでに予約が満杯だったというから、その息抜きさえ不可とされようとしていることに、国民が激しく反発した。