ユニクロで国内最大級の売り上げを誇る銀座店。売り場面積450坪に、常時20~30名が働く。松本晃明店長をはじめ2名の副店長、各階にフロア店長がおり、パート等を含め総勢約200名が在籍する。
松本店長はスーパースター店長である。店長、スーパー店長、スーパースター(SS)店長と大きく分けて3段階ある店長職でトップのランク。全国約760店舗中、SS店長はわずか十数名で、発注、販売計画、人事のほぼすべてを決定できる権限がある。
「たとえば発注。通常の店舗なら商品は自動発注ですが、銀座店は自分たちの計画で商品を入荷できる」と松本店長。SS店長となれば、社内のどこにでも出入り自由、柳井正会長兼社長の指示も直接仰げる。
「ユニクロでは、一人ひとりの日々の作業計画が明確。売り場の陳列整理、レジ、品出し等、どのフロアに何人販売員がいて、何をしているかが15分単位で計画されている。毎週月曜日、フロアの人事担当者が1週間分の稼働計画を作成するのです」
作業によっては秒単位で時間が定められているものもある。たとえば裾上げ。糸をほどくのに何秒、縫うのに何秒と決まっている。これはスピード感覚と顧客第一を全スタッフに浸透させることが目的だ。
「販売のベースはセルフサービスですが、必要とされるときには即適切な対応をするよう努めています。多いのは在庫問い合わせです。このときも検索してあるかないかをただ答えるのではなく、在庫があるならその商品と合うものを提案する。品切れの場合は類似商品を紹介する、ご自宅近くの店舗の在庫を探すなど、お客様のための最善策を考えて実行するようにしています」
権限を委譲されるということは、責任も引き受けるという意味である。
「店舗には月次と日次の売り上げ目標がある。売り上げは15分単位で確認でき、何時時点で何%を超えていれば目標を達成できるかが徐々にわかってくる。未達になりそうなら休憩をずらすなどしています」
ファーストリテイリンググループの経営理念の最初には「顧客の要望に応え、顧客を創造する経営」とある。
「お店、商品、従業員、売り場がお客様中心でないと、いま業績がよくてもいつ潰れるかわからないという危機感がある」(松本氏)
理念を共有するため、毎日朝礼で「基本方針と3つの約束」を唱和する。よい仕事をすれば褒め、約束を守らなければ叱る。当たり前のことを徹底することで一人ひとりの力が磨かれ、業績へとつながっていく。
※すべて雑誌掲載当時