チャンネル登録者100万人のヒロシもきっかけは「自分のため」

一番わかりやすいのは、ヒロシさんでしょう。彼は「ヒロシです」のフレーズでブレイクしてから一度、テレビの世界から離れました。世間からは「一発屋だ」「もう終わった」などと言われ、10年以上も“過去の人”として扱われてきました。

YouTuber事務所VAZ元代表の森泰輝さん
YouTuber事務所VAZ元代表の森泰輝さん(写真提供=扶桑社)

しかし、ご存じの通り今ではチャンネル登録者100万人を超える、日本トップクラスのYouTuberです。動画の世界にとどまらず、「ソロキャンプ」という市場を築いた感すらあります。

しかし、当のヒロシさんは、YouTubeを始めたのも「自分のための記録」がきっかけだったそうです。昔からキャンプは好きだったけど「大人数で行くと自分が十分に楽しめない」というのが悩みだったとか。

そこで、ソロキャンプを始めて、その動画を撮っているうちに「YouTubeというものがある」と知り、投稿を開始。ムリなく地道に続けていたら、見てくれる人が“勝手に”増えていきました。

世の中に隠れていた「本当はひとりでキャンプをしたい」というニーズに、みごとハマったのです。

ヒロシさんはまさに、「得意なこと」に振りきって、勝ち筋を見つけた好例です。

本当に得意なことには「再現性」が宿る

人生の中でたった一度でも「自分の勝ち方」を見つけた人は、その後の人生もずっと活躍できます。

なぜなら、本当に得意なことには、「再現性」が宿るからです。

例えばVAZで活躍していたYouTuberたちは、プラットフォームを変更しても活躍しています。TikTokやInstagramといった異なるSNSでも人気を博していますし、歌手活動をしたり、テレビタレントとしても活躍したり「自分の持ち味を発揮する方法」を、心得ているのです。

これは、優秀なビジネスパーソンが、転職先でも結果を残すのと同じことです。彼らは会社という舞台を変えても自分らしく価値を発揮できます。

もし所属している会社が倒産しても、得意なことがわかっていれば、別の組織でまた再現性をもって活躍できます。優秀な営業マンが商材を変えても同じように売れるのと、本質は同じです。

逆に、苦手の克服ばかりに気をとられていたり、なんでもソツなくこなして平均点を取ることに必死な人は、所属を失うと露頭に迷ってしまいがちです。

「自分に何ができるのか」を理解していないので、そもそも何で価値を発揮したらいいのかがわからないからです。

「得意なこと」を活かして自分の価値を最大限にまで高めた人に、日本マイクロソフトで業務執行役員を務めた澤円さんという人がいます。プレゼンテーションのうまさから、今では「プレゼンの神様」として知られる人です。

そんな澤さんですが、元々はエンジニアであり、マイクロソフトに入る前に所属していた会社では「落ちこぼれのエンジニア」だったそうです。著書『マイクロソフト伝説マネジャーの世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)の中では「私より優秀なエンジニアはごろごろいて、むしろ会社一のダメ社員でした」と語っています。