いまこそ実店舗を充実させるべき

世の中に逆行するようなことを言うが、私は飲食・小売・サービス業は今こそ「実店舗を充実させるべき」だと考える。いくら宅配や通販に頼ったところで、そこで提供できる価値は限られているし、結局は「日銭を稼ぐ」だけになりかねない。

小阪裕司『「顧客消滅」時代のマーケティング』(PHPビジネス新書)
小阪裕司『「顧客消滅」時代のマーケティング』(PHPビジネス新書)

実店舗を充実させたうえで、席数の減少や、時に営業時間の短縮・自粛などで採算が取れなくなった分を、顧客リストを活用した宅配などの施策で利益を補填する。そして、顧客リストを温めることで、再度、店舗に来てもらう。こうして売上を作っていくという発想をしてほしい。

「実店舗を充実させる」といっても、改装をしなければならないとか、ディズニーランドのようなしつらえがいるというわけではない。都下のあるクリーニング店では、店内でかける音楽や照明を日によって変えているというが、そういう配慮も「実店舗の充実」だ。

愛知県にあるハンバーグレストランでは、店内に「常連の塩」というものがあり、そこにはハンバーグに合う数種類の塩が用意されている。それを使えばハンバーグの味わいが変わり、深まり、利用客にとっては興味津々。しかしそれは、2回目以降の来店客しか使えない。こういったものもまた「実店舗の充実」だ。

改めて言うが、今こそ、実店舗だからこそ提供できる価値を考え、それを磨くべきだろう。コロナ禍が永遠に続くわけではないのだ。

実はこのコロナ禍の中、前述のハンバーグレストランは新店舗を作り、移転した。流行っているから店を大きくし席数を増やしたのではない。むしろ席数は若干減り、ここでは詳細は省くが、代わりに顧客にとってはさまざまな新しい「楽しさ」が増えた。

まさに、先が見えているからこその行動だろう。

【関連記事】
名車「クラウン」があっという間に売れなくなった本当の理由
「業務スーパーではこれを買え!」経済評論家が自信満々に訴える3つの理由
メンタル不調のときにまず食べるべき最強で手軽な「うつぬけ食材」
「大根の収穫で全身筋肉痛に」ANA社員は"飛行機が飛ばない1年"をどう過ごしたか
発売前からバカ売れ「ホンダの新型カブ」にバイク好きが飛びついたワケ