終わらない子育て、息子は「日本海側の大学」を中退し彼女と同棲
蜂谷さんは、息子が高校を卒業できるようにすることを最優先に考えた。夫は単身赴任が決まり、逃げるように引っ越していく。
「2016年の夏、有名な女優の息子が犯罪者としてニュースに取り上げられていましたが、母親である女優さんが気の毒で、何とも言えない気持ちでした。ただ、『息子をきちんとさせなければ』という思いは同じではないかと思いました。両親の介護もつらかったですが、この頃が今まで生きてきて1番と言い切れるくらい、つらくて苦しかったです」
2017年3月。息子は何とか卒業できることが決まる。息子にお金を盗られたのがショックだった蜂谷さんは、以降、入浴中も寝る時もバッグを離さなかった。
蜂谷さんは、「ここなら受かる」と担任が勧める日本海側の大学を1人で見学に行き、下宿先と入学を決めてきた。「行きたくない」という夫を伴い、息子の卒業式に出席すると、息子が入場してきた途端、蜂谷さんは号泣した。
息子「やりたいことなんてない。(俺が)生きているだけマシだと思え」
そして3月末。夫は単身赴任先のアメリカへ、息子は雪国へ旅立った。問題の彼女と同じ大学だった。彼女は息子の下宿の隣に住み、3カ月で大学を辞めた。息子は行ったり行かなかったりを繰り返し、最終的にはバイトの先輩が起業する際に誘われ、2020年4月に退学。
蜂谷さんは仕送りを止め、「働いてお金を貯めて、自動車免許を取りなさい。5年後に楽しく生きていられるように考えて」とだけ伝えた。
息子は「やりたいことなんてない。(俺が)生きているだけマシだと思え」と言った。
「今までお金に困ったことが無い息子。1円を稼いで、それを貯金することがどれだけ大変かを、少しずつでもいいから学んでほしい。同じ年齢の男の子の事件がある度に息子に重ねてしまいます。どこで狂ったのでしょう。息子がどうしようもなく腐ってしまったのが、親の介護よりずっとずっとつらいですね……」
息子と彼女は3年前から同棲を始め、息子は2年半帰ってきていない。
「私は仕事と子育てを両立できるよう頑張ってきたつもりです。平日は両親に預け、土日祝日は夫に預けて生後3カ月から美容室で働き、3歳前から幼稚園。店が休みの日はお弁当を作って公園に行ったり、クッキーを作ったりと、できる限り子育てを頑張ったつもりです。でも、息子は腐ってしまった。でもどんなに腐っても私の息子です。育てた責任は取らなければと思います。いつか自立して、『生きてて良かった』と思えるようになってほしいですね……」
2020年後半、生みの父親が亡くなった。
蜂谷さんにとっての親は、育ての親だ。生みの父親が亡くなると、生みの母親が介護経験のある蜂谷さんを頼ってきたが、生みの両親には子供が3人いる。蜂谷さんは、3人のうちの誰かを頼るよう生みの母親に話した。
生みの両親が近くにいながら、養父母に育てられ、2人を介護の末、看取った蜂谷さん。両親の介護は終わったが、いまだ成人した息子の将来を見通すことができないでいる。