医師会はICU病床数を正しく把握しているのか

【森田】実は、スウェーデンでは、それも統計を取っていて、ネットでグラフを見ることができるんです。それを見ると、待機手術という、急がなくても命に別条がない手術は、コロナの感染拡大とともに急激に減っています。しかし、緊急性を要する手術は延期していないことがわかります。

病院
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感染症というのは波があって、ドーッと増えたかと思うと、ピークを迎えた後、サーッと引いていく。スウェーデンでは、それに合わせて一般病床を一気にコロナ用の病床に転換し、波が引いたらすぐに元に戻している。なので、延期していた待機手術もすぐに数が復活するんです。

これはすごく大事なことで、日本ってなぜか、一度つくったものは維持しようとしますよね。コロナ用のICUをつくったら、今度はそのまんまにしている。でも、感染症は波があるんだから、臨機応変に変えて、対応していくことがとても大事です。

それから、もう一つの論点として、上に立つ人たちが、きちんと数字を把握していないことです。たとえば、日本医師会の中川俊男会長は2021年1月14日の定例記者会見で、新型コロナ向けの病床を大幅に増やせない理由として、民間病院は公的病院に比べてICU等の設置数が少なく、専門の医療従事者がいないことなどを挙げています。確かに、人口当たりの医師や看護師は多くないですが、日本は諸外国と比べてもICU病床は少なくないんです。

病床数の嘘

【鳥集】そうですね。私もOECD(経済開発協力機構)のサイトなどで各国比較のデータを見たことがあります。

【森田】ええ、日本はICUしか統計に入れていません。でも、他国はHCUも救急病床も入れて統計を出している。日本も救急病床とかHCUを入れれば、そんなに少ないわけではない。また、日本は病床数は多いけど、慢性期病床とか精神科病床が多いといわれるんですが、これも嘘です。

急性期病床だけで比較しても日本は多いんです。いずれにせよ、感染者数、死亡者数は何十倍も差があるわけですから、やれないじゃなくて、やらなきゃいけないんですよ、本当は。

一部の医療従事者に負担が集中する構図

【鳥集】どうして、やれないって言ってしまうんでしょうか。

【森田】医療業界は、「自分たちは頑張っている」と言いたいんです。ツイッターを見ていても、「うちの病棟は満床だ」「コロナ病棟は大変だ」と訴えるツイートを、たくさんの人がリツイートしています。しかし、医療従事者みんながコロナ病床で働いているかというと、まったくそうではありません。