【森田】コロナ病棟の最前線で働き続け、大変な思いをしている看護師さんや医師の方々には敬意を表しますが、そもそもコロナ用として全病床の数パーセントしか使っていないわけですから、一部の医療従事者に負担が集中するのは当たり前なんです。
【鳥集】たとえば、森田先生のいる鹿児島で感染爆発が起こって、地元の開業医の方々で輪番制を組んでコロナ病棟を手伝いに行くことになったら、森田先生も協力しますか。
【森田】もちろんです。そういう取り組みも、あっていいと思います。
【鳥集】人工呼吸器の操作や感染管理に慣れていない医師が多いという話もよく聞きますが、そうなのでしょうか。
【森田】確かにそのとおりなのですが、だからといってまったくできないかというと、それもまたおかしな話です。僕なんかでも、病院勤務時代は何の問題もなく人工呼吸器を操作していました。もう10年くらいそうした現場からは離れていますから、アップデートはしなくてはいけませんが、たぶん2~3日学べばできるようになると思います。
【鳥集】しかし、他科の医師や民間病院、開業医まで総動員して、コロナを診ようという声が、なかなか聞こえてきません。
日本の医療が「専門分化」しすぎた弊害
【森田】専門分化しすぎている弊害もかなりありますね。2004年に臨床研修制度が改定され、医学部卒業後2年間は、すべての科を回って、ジェネラリストを育てようということになりました。それで少しはよくなったかなと思っていたのですが、2年間の研修が終わったら、98%が専門医コースに進むのが現実です。私のような総合診療医になる専門医の制度もできましたが、選択してくれる研修医は2%くらいしかいません。
【鳥集】総合診療医の人たちは、感染症を診るのは当然という意識はあるんですか。
【森田】もちろんです。だって、受診される患者さんの発熱って、多くが感染症ですからね。感染症を診ないという総合診療医は、あり得ないです。
【鳥集】一方で外科や他科の医師は、自分はコロナを診ることはできない、あるいは自分には関係がないと思ってしまうのでしょうか。
【森田】そうですね。まあ、外科の先生でも、普通の風邪ぐらいは診ている先生のほうが多いとは思いますけど、自信をもってやれているのかというと、ちょっと引き気味な感じにはなってしまうでしょうね。