「文系宇宙飛行士」が誕生する?

JAXA(宇宙航空研究開発機構)はこの秋、13年ぶりに宇宙飛行士を募集する。1983年以降、5回募集が行われ、11人の飛行士が誕生した。これまで同様、採用者は「若干名」の見通しだが、一つ大きな違いがある。大原則にしていた「自然科学系出身」を見直して文系にも門戸を開くなど、応募条件の緩和を検討していることだ。これまでのような理系だけでなく、文系飛行士も誕生する時代が来るのだろうか?

2020年11月15日、発射台に向かう前に、見送りの人たちに応えポーズを取る野口聡一さん(アメリカ・フロリダ州ケネディ宇宙センター)
写真=AFP/時事通信フォト
2020年11月15日、発射台に向かう前に、見送りの人たちに応えポーズを取る野口聡一さん(アメリカ・フロリダ州ケネディ宇宙センター)

今年1月、JAXAは宇宙飛行士の採用・選抜・訓練・働き方などについて、一般から意見を募る「パブリックコメント」を開始した。3月19日が締め切りで、寄せられた意見を参考に、今秋実施する宇宙飛行士の募集や選抜方法、その後の働き方などを検討する、という。2月にはオンラインのイベントも開催し、さまざまな立場の人から意見を聞いた。

13年ぶりの募集の背景には、今後、宇宙飛行士の活躍領域が広がると見込まれることがある。現在の飛行士は、高度400キロメートルの「国際宇宙ステーション(ISS)」で、科学実験、観測、補修、管理などの仕事をしている。今回の募集は、ISSのさらに先、地球から38万キロメートル離れた月探査を見据えている。

アメリカの新宇宙ステーション建造へ参加

引き金になったのは、トランプ前大統領時代の米国が、2024年に月へ宇宙飛行士2人を着陸させる「アルテミス計画」をスタートさせたことだ。月面基地を建設し、そこを拠点にさらに火星有人飛行も目指すという。この計画の一環として、米国は月の近くに宇宙ステーション「ゲートウェイ」も新たに建設する。

日本はこのゲートウェイへの参加を決め、昨年12月にNASA(米航空宇宙局)と了解覚書を交わした。覚書によると、2023年からゲートウェイ建設を開始し、28年に完成させる。ただ予定は早くも遅れ気味で、建設開始は24年からと見られている。

新たな飛行士の仕事はゲートウェイ建設や滞在、2024年以降の運用延長が検討されているISS滞在だ。日本が月面基地にも参加すれば、月面拠点造りも仕事になる可能性がある。