一方、国民の税金で運用されているJAXAが文系飛行士を送り出すとなると、なぜ文系が必要なのかについて、もっときちんと論理立てて説明する必要があるだろう。

今、日本では副業解禁、リモートワークなどの働き方改革が進む。JAXAの2月のイベントでは、普段は別の仕事をしていて飛行時だけJAXAの飛行士になる「パートタイム飛行士」「副業飛行士」などの案も出た。

「技術で勝ち、産業で負ける日本」を変えられるか

JAXAの飛行士第1期生で、2回の宇宙飛行体験がある毛利衛さんは、初めての飛行時に「日の丸を意識した。国を背負っているプレッシャーを感じた」という。「日の丸」と「副業」――。宇宙飛行士という職業へのイメージも様変わりしてきているのかもしれない。

飛行士の応募条件に限らず、最近では、そもそも文系と理系を分けることへの疑問も強まっている。文系と理系の知識を融合することで、時代にふさわしい知を生み出し、さまざまな問題解決につながると期待されるからだ。

国の科学技術振興策の方向性を示す「科学技術基本法」は、昨年25年ぶりに「科学技術・イノベーション基本法」と改正された。これまでは科学技術、いわゆる理系だけを対象にしていたが、改正によって人文科学も対象になる。理系だけでは、社会に受け入れられたり、価値を生み出せたりするとは限らないからだ。「技術で勝ち、産業で負ける日本」の汚名を返上するためにも、多様性の重要さが見直されているのだ。

せっかく「文系宇宙飛行士」という問題提起をしたのだから、これからの宇宙開発像や飛行士像について、議論や検討を重ねる機会へとつなげていくこともJAXAに求められている。

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