アップルが本格的に自動車製造に乗り出す
現在、米アップルが未来型自動車といわれるアップルカーを作るため、各国の自動車メーカーに電気自動車(EV)の生産を打診している。アップルは“iPhone”のように、機器(デバイス)の設計と開発は自社が行い、生産(組み立て)を特定の企業に委託する形式を考えているとみられる。
重要なポイントは、アップルがどのような自動車を生み出そうとしているかだ。過去のアップルの事業運営を確認すると、誰もが思いつかなかった機能を実装した“ヒット商品”を生み出すことによって、アップルは世界の需要を取り込んだ。電話機、パソコン、音楽再生機など複数の電子機器の機能が備わったiPhoneはその代表的存在だ。
自動車には多くの発展可能性がある。現時点で考えた場合、アップル自身も自社が進める自動車がどのような機能を持つか、具体的なアイデアはまとまっていないかもしれない。別の言い方をすれば、アップルはさまざまな発想の実現を目指すことによって、多くの人が欲しいと思ってしまう移動を支えるプロダクトを生み出そうとしている。
そうした取り組みが進むことによって、これまでの自動車の常識は変わる可能性がある。アップルがどのような自動車のコンセプトを練り上げていくか要注目だ。
人の「生き方」までも変えるイノベーション
アップルは、自動車分野でのイノベーションを目指している。故スティーブ・ジョブズらが創業したアップルの特徴は、世界があっと驚く新しい機能を持ったプロダクト(機器やサービス)を創出して需要を生み出し、それを獲得することによって成長してきたことだ。それは、アップルが“イノベーション(既存の市場、技術や発想などの新しい結合)”を実現したことを意味する。
1977年に発表されたコンピューターの“アップルII”はヒットを遂げ、世界に“パーソナル・コンピューター(パソコン)”の概念を定着させた。その後、ジョブズはアップルを去った。1997年、ジョブズは経営危機に瀕していたアップルを再建するために復帰した。ジョブズの指揮の下でアップルはソフトウエア(macOS)の開発を進め、携帯型の音楽再生デバイスである“iPod”を発表した。