iPodが革新的だったのは、インターネットから音楽をダウンロードして楽しむという生き方を創ったことだ。その結果、人々はCDなどを買う手間から解放されたといえる。その後、アップルはiPhoneやiPadを発表して世界経済に大きな影響を与えた。
自動運転やIoTの先を行く技術を生み出そうとしている
iPhoneの登場は、世界の製造業に水平、あるいは垂直分業という変化をもたらした。アップルは、機器のデザインや機能を支えるソフトウエアなどの設計と開発に注力している。また、同社は自社の考える機能を実現するために、世界の企業から高品質な部材を集めている。その上で、アップルは台湾の電子機器の受託生産企業である鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンなどに製品の組み立てを委託した。
以上をもとに考えると、アップルは、電動化、ネットワーク空間との接続や自動運転、シェアリングといった“CASE”のコンセプトや、動く都市空間の一部としての自動車のさらに先を行く自動車を生み出そうとしている可能性がある。それが具体的にどのようなモノになるか、アップル自身が試行錯誤している段階ではないか。
自動車産業へ参入する狙いは
アップルが各国自動車メーカーにEV生産などを打診した理由の一つは、試作車を低コストで作り、実用化の可能性を確かめるためだろう。過去にもアップルの自動車開発(アップルカー)が注目を集めたことがあった。ここにきてアップルの自動車分野への取り組みは加速しているとみるべきだろう。
その背景には、コロナショックによって人々の生き方が変わり、自動車の社会的重要性が高まっていることがある。2020年4月以降、中国では販売補助金政策などが支えとなって自動車のペントアップ・ディマンドが発現し、その他の主要国でも自動車需要が上向いた。その結果、日米などで中古車の価格はコロナショック以前の水準を上回っている。自動車への需要が高まっているため、車載半導体の供給不足も深刻だ。