自然エネルギーによる発電能力を高められるはずだ

【古川】その通りです。

【水野】ここをもう一度、しっかり見直しましょうよ。そもそも、化石燃料はいずれなくなります。要するに、遠い中東にまでわざわざ仕入れにいく必要もなくなるわけです。

しかも日本には、ふんだんに降り注ぐ太陽光や、温泉大国ならではの地熱もある。風力発電や水力発電もあります。化石燃料と原発に依存しきっている仕組みを全部切り替えていく覚悟を持てば、他国への依存度は一気に減りますし、「毎年、貿易黒字を出し続ける」必要もなくなります。

【古川】東日本大震災に伴って起きた福島原発事故の後、私が国家戦略担当大臣の時に取りまとめた「革新的エネルギー・環境戦略」によって、日本はいったん脱原発へと舵を切りましたが、安倍政権となり、再び原発を維持し続ける方向へと逆戻りしてしまいました。しかし世界では、ドイツのシーメンスやアメリカのGEが原発事業から距離を置くなど、むしろ国だけでなく企業も含めて、脱原発の動きが強まっています。

日本はもっと自然エネルギーによる発電能力を高めることができるはずです。特に地熱発電。同じ温泉大国であるアイスランドでは地熱発電だけで20%以上もの発電をしています。日本でもそれくらいの潜在力はあるのではないでしょうか。原発や火力に替わる代替エネルギーの開発にもっと積極的に取り組むべきです。

再生可能エネルギーの発電風景
写真=iStock.com/imacoconut
※写真はイメージです

日本人はドイツ人より「年間300時間」多く働いている

【水野】すると変わってくるのが、日本人の働き方です。「毎年、黒字を出す」「右肩上がりに成長する」目標のために、いったいどれだけの日本人が「過労死」や「うつ」「自殺」などのリスクにさらされていることでしょう。

日本人の「正社員」は、統計上平均して年間2000時間働いています。本当は、もっと長時間働いていると思いますが、一方のドイツ人の労働時間は、パートの人も含めて平均1390時間ですよ。同じ基準でみると、日本は1670時間です。その差は、なんと年間300時間近くにも及ぶ。45年間働くとすると、1万2600時間余計に働いていることになります。

【古川】一年間に300時間も余裕があれば、いろんなことができますね。家族や友人と、もっとゆっくり過ごす時間を持てるでしょうし、のんびり長期の旅に出て心身を癒やすことも可能でしょう。趣味や勉強に打ち込むこともできるだろうし、美術館や映画館、コンサートなどに足を向ける意欲も出るでしょう。可処分所得ならぬ、可処分時間がそれだけ増えれば、「仕事」と「生活」以外に、「余暇」の時間を確保できるようになって、真の“豊かさ”を実感できるようになるのではないでしょうか。