「コロナ患者受け入れ」は即決だった

ホテルは立地がすべてであり、アパホテルも東京を中心とした大都市を中心に展開しています。大都市では地下鉄の駅から徒歩3分以内、地方では駅近にこだわってきました。これなら同業他社の需要を奪うことなく、迷惑をかけることがあまりありません。

アパグループ元谷外志雄代表
アパグループ元谷外志雄代表(撮影=市来朋久)

都心23区だけでも全保有数の5分の1となる85ホテル2万101室、フランチャイズは7ホテル1101室です。さらに2022年までに上野・浅草など台東区を中心に都内8ホテル2200室を建設する予定です。郊外でも、アパブランドの基準を満たすと認めたホテルに限り、フランチャイズの希望に応じています。

また新都市型だからこそ、リーディングカンパニーとしての責務も果たせました。

コロナ患者受け入れについては政府筋から直接、私の携帯電話に意向打診の電話があり、二つ返事でOKしました。アパホテルは大都市圏にホテルが多いし、客室数も多く余裕もあるため、お役に立ちたいとずっと考えていたのです。すると翌朝、さっそく受け入れ先を確保したと報道されていました。このように即座に決定・指示を下せたのは、私がホテルの全株オーナーだからでしょう。

受け入れ先の一つとなった日本最大客室数2311室のアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉では、社員総出で、予約済みのお客様に電話で他館への振替やキャンセルのお願いをしました。

「コロナ患者を受け入れていたホテル」として風評がたち、その後の営業に差し支える懸念は十分ありましたが、アパホテルの対応一つで他のホテルも追随することになりますからね。なおコロナ患者受け入れ施設については、2月以降さらに23ホテル8500室超となりました。

「キャッシュバック」が出張ビジネスマンの心を掴んだ

帝国ホテルが行っている月額36万円泊まり放題については、あまり儲からないんじゃないですか。帝国ホテルはピラミッドの頂上の層を対象にしていますが、そこが一番狭い。我々は中腹あたりの、層の厚い部分を狙う。彼らに、良いと思ってもらえるようなホテルを作ればその上の層からも降りてくるし、下からも背伸びして興味を持ってもらえるようになるという算段です。

アメリカには「ファイブパーセントクラブ」という言葉があります。これは5%の優秀な人材がいれば、残り95%が凡庸であっても企業は安泰であるという意味です。出張をするのは会社の経費をかけても儲けを出すことができるこのエリートなのです。

彼らが何よりも大事にするのが時間ですが、歩き回らなくても全ての用が足せるよう全てのスイッチがベッドサイドにあるように設計し、寝具は安眠のために独自開発したベッド「クラウドフィット」と枕「エアーリラックス」を導入し、シングルルームでも50型の大型液晶テレビを標準装備しています。そうした営業努力の積み重ねが今日のアパブランドを作り上げたといえます。

また、それを盤石にしているのが、創業初日から開始した会員制度。第一号会員は私、そこから徐々に増えて現在では1900万人以上の累積会員がいます。会員には宿泊料金の10%をキャッシュバックするので、それが出張ビジネスマンの評判を呼んで固定客層の獲得に繋がりました。