2014~19年に過労自殺などで社員6人が労災認定
三菱電機の自動車部品事業の売上高は1兆円前後とみられる。脱炭素の世界的流れの中で、昨年6月には、電気自動車(EV)などで電力を効率よく制御するパワー半導体の工場を200億円かけて新設すると発表。ライバルの富士電機や東芝なども設備増強する中、今回の問題で受注を逃せば影響は小さくない。
今回の品質不正の発覚以外にも経営を揺るがす問題を三菱電機は起こしている。パワーハラスメントによる相次ぐ社員の自殺だ。
三菱電機ではグループ全体で2014~2019年に、過労を原因とした自殺などで男性社員6人が相次いで労災認定を受けた。また2019年8月には教育主任から暴言を受けていたとみられる新入社員の自殺も発生した。
この反省から会社側が再発防止策として「風通しよくコミュニケーションができる職場づくり」や「メンタルヘルス不調者への適切なケアの徹底」等を目指し、「三菱電機 職場風土改革プログラム」を今年1月に公表した。「特にパワーハラスメント行為を絶対に許さない職場づくりに注力します」として、ハラスメント研修の受講対象を全社員に広げるほか、相談窓口の充実などを進めている。
「経営の最優先課題とし、こうした問題が再び起きないように取り組んでいく」(広報担当者)としているが、市場は冷ややかな目で見ている。
ESGレーティングは「トリプルB」に格下げ
調査機関の米MSCIは2019年12月に三菱電機のESGについてのレーティングを7段階中、上から3番目の「A」から1つ下の「トリプルB」に格下げした。繰り返される従業員の自殺など深刻な労働問題が起きたのが理由だ。
多くのファンドでは環境への配慮や社会貢献、人権、企業統治体制などを数値化したESGスコアなどを基に、年に2回、銘柄の入れ替えを検討する。この中で三菱電機はレーティングを構成する項目の1つである「労務管理」の評価で引っかかった。
それまでの三菱電機はESGへの取り組みが進んでいる企業とされていた。省エネ製品の拡販やグループ全体で排出する二酸化炭素(CO2)を削減する施策などをライバルに先んじて進めているためだ。MSCIはESGを評価する観点の1つ、「有害物質と廃棄物管理」について10段階評価の8.4(電機業界の平均は5.6)をつけたこともあるほどだ。