「昇格するためには絶対服従」という企業風土
そんな三菱電機で、なぜ不祥事がこうも頻発するのか。
企業統治に詳しい弁護士は、「特に技術系の部門では他部門との人事異動が少ない。構造上、特定の上司に長く仕えなければならず、昇格するためには絶対服従が求められる」と指摘する。
品質不正の問題では、上司に不正発覚の報告をためらい、問題製品の隠蔽につながった。相次ぐ従業員の自殺などの労務問題も、他部門への異動が少ない縦割りの組織体制が原因とみる向きは多い。
「三菱電機はその部門に入ると、その筋一徹みたいな技術者の育て方をする。部門間での競争意識も高く、部門が違えばまるっきり雰囲気も違う」(ライバルの電機大手幹部)という分析もある。
「年収1億円以上の役員」は21人→1人に
さらに、三菱電機の縦割り組織の弊害を助長するのが、役員の報酬制度だ。
役員の報酬は固定報酬、業績連動報酬、退任慰労金の3つで決まるが、最も多いのは業績連動報酬で全体の過半を占める。各執行役の支給額は、担当事業の業績を踏まえて決まる。要するに各役員は、担当する事業部門の1年間の業績が大きく年収を左右するのだ。
結果として、短期業績目標を達成させようとするあまり、社員に負荷がかかり、職場環境が悪化、不正や過労死、パワハラなどが頻発する「負の連鎖」を招いてしまうことになる。
三菱電機は上場企業の中でも年収1億円以上の役員が最も多いことで知られた。
2019年3月期には1億円以上の役員は21人にも上った。しかし、2020年3月期には前年同期比で営業利益が11%減ったため、1億円プレーヤーは1人となった(東京商工リサーチ調べ)。