「違うこと」より「同じもの」を探ることで分断を乗り越える

ジョン・スチュアート・ミルは『功利主義論』の中で、「満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい」と述べています。「豚は自分の立場からしか物が見えないから単純に満足してしまうけれども、人間はいろいろな視点を持っているので、なかなか満足できない」ということです。

山口真由『「ふつう」の家族にさようなら』(KADOKAWA)
山口真由『「ふつう」の家族にさようなら』(KADOKAWA)

私はこれからの世の中は、「物事を単純化する人ほど得をする世界」にしてはいけないと思っています。複雑さの箱を開けてしまったら幸せになれないかもしれないけれども、それでも物事を多面的に見られる人間でありたいし、単純化による社会の分断に与してはいけないと感じています。

私が『「ふつう」の家族にさようなら』で伝えようと思ったことは、「ふつう」の家族とそうでない家族の違いを探して、評価したり批判することではなく、むしろお互いに共通する点を探すことでした。独立して生きている女性たちも、結婚して子どもを育てているママたちも、どこかに同じところがあるはずです。

分断を乗り越えるために、なるべく「違うこと」より「同じもの」を見つけにいく。「あなたにも、あなたにも、あなたにも同じもの」があれば、それが家族の「普遍」になるのだろうと思っています。

(構成=久保田正志)
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