国会議事堂
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安保イデオロギーはいまだに重要な投票の動機

2021年2月19日に発売された拙著『日本の分断 私たちの民主主義の未来について』(文春新書)の刊行に合わせ、日本政治と分断を考えるうえで参考となる最近の書籍を紹介したい。今回は2019年発刊の遠藤晶久/ウィリー・ジョウ『イデオロギーと日本政治―世代で異なる「保守」と「革新」』(新泉社)を取り上げる。当時、日本の若者の「保守」「革新」に対するイメージが逆転していることが話題になっていたことから、硬い内容であるにもかかわらず評判になった。

イデオロギーの重要性は、時代によって変わる。冷戦が終わり、90年代に自社さ連立政権が成立するなどし、安保イデオロギー対立の重要性が減じるのではないかという見通しが示されていた。

しかし、先行研究が示すように、自民党を選ぶ人にとって安保イデオロギーはいまだに重要な投票の動機である。経済政策では自民党を成長重視の政党として認識する人々が増えたものの、投票行動全体を見る限りは、政党間の競争が、一部の研究者が予想したようないわゆる新自由主義をめぐる対立軸に置きなおされたとは言えない。