菜食主義者の便から検出された「酪酸産生菌」

こういうライフスタイルのご一家を、旧知の大学教授が紹介してくれたので、興味を惹かれた私が調査をお願いしたのでした。このご一家のウンチを分析すると、フィーカリバクテリウム(=大便菌)とラクノスピラという腸内細菌が、特徴的に多く検出されたのです。つまり、菜食主義者のウンチからは、これらの菌が多く検出できるということです。

これらの菌は「酪酸産生菌」と呼ばれ、「食物繊維」から「酪酸」という物質を作ります。その酪酸は、がん細胞の抑制、腸粘膜の正常化による免疫向上、腸管機能向上効果による消化・吸収の促進など、有益な健康効果があることがわかっています。

腸の健康のために良い食品
写真=iStock.com/Palina Charnova
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とりわけ大便菌は、新しく発見された珍しい菌ではなく、古くからその存在が知られ、日本人ならば誰でもが持っていると言っていい腸内細菌です。

しかし培養するのがむずかしかったので、その実態がつかめていなかったのです。それが近年に発達した遺伝子解析法によって実態があきらかになりつつある菌でした。

大便菌に代表される酪酸産生菌が弱っていると、たとえば風邪をひきやすくなるなど、体の衰えをもたらすことがわかってきていました。それまでにフィールドワークをしてきた健康長寿地域の人たちのウンチからも多くの酪酸産生菌が検出されたことから、私はピンときたのです。

健康長寿地域の研究から発見された「長寿菌」

「野菜をたっぷりと食べる食習慣は、食物繊維を大量に摂ることだから、おのずと酪酸産生菌を増やす。酪酸産生菌が増えれば酪酸の産生を促進させるので、これが健康長寿のカギになっているに違いない」この発想は、健康長寿地域における野菜中心の食生活と腸内細菌を、新たな視点をもって関連づけるものになりました。

そこで私は、大便菌とラクノスピラ、そしていわゆる「善玉菌」としてよく知られるビフィズス菌の三つの菌を、ひとつのグループにまとめて「長寿菌」と名づけ、フィールドワークによって検証してみようと考えたのです。

三つの菌をひとつの長寿菌グループにしたのは、ビフィズス菌だけがもてはやされて健康の要として考えられる傾向が強いことに私は少々の疑問をもっていたからです。なぜなら、ビフィズス菌はつねに腸内にいる常在菌であるがゆえに、他の常在菌と複合的な働きをする、理由や役割があると私は基本的に考えるからです。

ビフィズス菌だけがものすごく良い働きをするのではなく、他の未知なる常在菌の力もあって、それらが複合的に働くからこそ腸内環境を良くしていると考えたわけです。そうした考え方から、私は長寿菌と名づけるならば、それは菌のグループであるべきだろうと発想したのです。