「1人で100世帯以上を担当」不足するケースワーカー

生活保護を扱う福祉事務所は自治体直営ですが、そこでの人員不足も非常に深刻です。朝日新聞の調査(※1)によれば、指定市・東京23区・県庁所在市・中核市の全国107市区のうち7割で、生活保護世帯の支援にあたるケースワーカー(CW)の担当数が、国の定める標準である80世帯(都市部)の水準を超過していました(2019年度)。

(※1)「ケースワーカー配置標準、7割満たさず 主要107市区」2020年12月18日 朝日新聞デジタル

1人のCWが100世帯以上を担当する自治体は32にのぼり、とりわけ状況がひどいのが大阪です。1CW換算で大阪市114世帯、堺市139世帯、東大阪市161世帯、豊中市188世帯という標準数の1.5〜2倍以上まで至っています。

ドミノの連鎖倒壊を防いでいる人のイメージ
写真=iStock.com/AndreyPopov
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このような状況で通常業務をまわせるはずもなく、窓口での相談業務、保護のスムーズな審査、保護世帯への支援業務に支障が出てきます。2020年に大阪府八尾で生活保護を受給中の母(50代)とその息子(20代)が死亡した事件がありましたが、八尾市のCWの当時の平均世帯数は128世帯。亡くなった方の担当者は病気休職中だったと言われています(※2)。人手不足かつ多忙化する職場では職員が心身の調子を崩して休職が多発します。それをカバーする形で別の職員にさらなる負担がかかる。まさに負のスパイラルです。

(※2)「57歳と24歳、ある母子の死 かつお節と体温計残して」 2020年12月18日 朝日新聞デジタル

人員体制は自治体ごとの格差が大きい

このような人員体制の劣悪な多くの自治体で採用されているのが非正規(非常勤)職員の存在です。

先の朝日新聞の調査によると107市区で約4500人の非正規職員を雇用しており、ケースワーク業務や補助業務に充てています。そこで働く非正規職員のほとんどは短期契約で給与待遇も低く不安定な状態です。CW配置水準の悪さで突出している大阪府豊中市はすでに4割以上のケースワーカーが非正規であり、就労支援相談員などもあわせると過半数が非常勤という非正規依存の状態です。

注意が必要なのはケースワーカーの人員体制は自治体間の格差が大きいという点です。実は1CW80世帯以内の配置標準をきちんと満たす自治体が3割ほどあります。政令市では20市のうち6市(川崎市やさいたま市など)が、東京23区でも8区(中央区、港区、足立区など)が基準をクリアしています。こうした自治体であれば、非正規依存の必要もなく安定した業務を行うことが可能でしょう。

そもそも国は、生活保護ケースワーカーを正規職員で担うものと定めており非常勤職員で代替することを認めていません。また、ほとんどの自治体が受け取っている地方交付税交付金にはケースワーカーの人件費が算定されています。ですから地方交付税交付金を受け取っているのに正規職員を標準数まで充足せず、人件費の安い非正規職員で代替しようという自治体はそのことをもっと非難されるべきです。

自治体側にも交付金が十分でないとか、定数管理で人員削減を求められているという言い分はあります。それでも標準数を遵守している自治体がある以上、看過できません。自治体の責任があらためて問われています。