セーフティネットの窓口が、非正規化でボロボロ

新型コロナウイルスによる影響(失職・労働時間減など)はとりわけ非正規の女性を直撃しました。リーマンショックでは製造業派遣を中心に大規模な「派遣切り(雇い止め)」がおこなわれたように、金融危機やパンデミックの影響は労働市場における不安定な人びとにとくに大きなダメージをあたえます。失業による生活困窮が増加すれば、生活保護など生活困窮への福祉政策の出番が増えます。

皮肉なのは、非常時に役割をはたすべき福祉部門が非正規(非常勤)化でボロボロになっているという事実です。

1990年代以降、日本の労働市場における非正規率は一貫して高まり続けてきました。危機に弱い層を構造的に量産しつづけながら、いざ危機がくれば容赦無く切り捨てる。切り捨てられ困窮した人びとが相談に向かう先、その福祉の窓口はおなじ不安定な非常勤職員で固められているのです。これはハローワークでも同じ構造で、再就職を求める人びとへ仕事を斡旋する窓口職員の大半が不安定な有期雇用の非正規職というのはもはや悪い冗談のようです(※3)

(※3)「ハローワーク職員1万人以上、雇い止めの可能性 『相談乗った翌日から失業者、ブラックジョーク』」2021年2月15日 京都新聞

さらに政府はCW不足に苦しむ自治体からの要求等を受け、生活保護におけるケースワーク業務のさらなる外部委託化を検討しています(※4)。非正規化のつぎは、民間委託化ということです。職員を削り業務をアウトソーシングした先、労働市場を不安定化し、福祉部門を不安定化しつくした先はどのような社会でしょうか。ボロボロで危機に脆弱な社会、行政が困窮者を助けられない社会が目の前にきています。

(※4)「令和元年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和元年12月23日閣議決定)

【関連記事】
「生きて苦しむより、死んだほうがマシ」就職氷河期世代、51歳男性の絶望
「どうあがいても無理です」給付金コールセンターでみた非常識なオペレーターたち
「ただただ悲しく、悔しい」…複数の自分の患者を鬱で亡くした精神科医の心痛
時給900円の「非正規公務員」が増え続けるワケ
「仕事やお金を失ってもやめられない」性欲の強さと関係なく発症する"セックス依存症"の怖さ