御年83の森氏の発言は、全くエビデンスのないフェイクニュースばかり

森氏は御年83。昭和12(1937)年生まれのおじいちゃんである。現役でよく頑張っているが、時代感覚は致命的にズレている。それは世代的な宿命かもしれない。

日本の政治や経済を見ていると、組織のトップにいるそうした後期高齢者のズレは目に余るものがある。例えば、数合わせやアイキャンディ(目の保養)のために企業経営のことにあまり精通しない女性を社外役員にすえる経営者や、資質があるとは言えない女性を選挙の候補者にすえる政治家たち。彼らにとっては、女性はお飾りであって、お人形のように座っていてくれればいい、というのが本音かもしれない。だから口を開かれるだけで、うっとうしい。

「黙って座っていてほしい」という時代遅れの政治家や経営者の思いとは裏腹に、実は女性のリーダーシップの素養は男性より高く映るシーンがコロナ禍で増えている。前出のドイツのメルケル首相、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相、台湾の蔡英文総統など女性リーダーたちの国民に向けたスピーチや手腕は国際的にも高く評価されている。その点、わが国の男性首相はどうだろうか。

2020年12月にハーバードビジネスレビューで発表された論文によれば、女性のリーダーシップスキルはほぼすべての項目で男性を上回り、このパンデミック危機でその差は埋まるどころか広がったという結果だった。

このように、森氏の発言は、全くエビデンスのないフェークニュースであるばかりか、結果的に女性を貶める性差別的発言と受け取られてもしかたない。必死にステレオタイプと戦い、声を上げようとする女性たちの芽を根こそぎ摘み取りかねない、絶対に口にしてはならないタブーだった。日本はともかく世界の人は黙っていない。

日本オリンピック委員会の女性理事増員方針をめぐる発言について記者会見する東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長=4日、東京都中央区[代表撮影]
写真=時事通信フォト
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長年、企業リーダーなど日本のトップエリートの「家庭教師」としてプレゼンやスピーチのコーチングに関わってきた筆者であるが、コミュニケーションという観点で森氏ほど評判のよろしくない人もそうそういない。周囲にいる人から漏れ伝わってくるのは、「下の人を怒鳴りちらす」「横柄で、人を見下す」「下々の者に目を合わせることなく、意見を聞かない」といった声で、「政治家の中でも、ダントツのワーストワン」という不名誉な評価だ。

長年、永田町界隈や組織の要職として活動した功績はあるに違いない。

だが、コロナ禍において森氏が対外的な顔でいるということはもはや恥ずかしい。これまで、ありとあらゆる問題発言や行動にもかかわらず、強権をふるい続けてきたわけだが、今回、踏んでしまった地雷はあまりにも巨大だ。

森氏はこれ以上晩節を汚してはいけない。「日本」「日本人」を思う気持ちがあるなら、即刻責任をとっていただきたい。

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