一番重要なのは栄養と睡眠をしっかりとること
『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』
峰宗太郎・山中浩之著
日経プレミアシリーズ/850円+税
20年12月刊
峰医師は国立感染症研究所などを経て2018年から在米研究機関に勤務する39歳の病理医で、ワクチンに一番近いウイルス免疫学の専門家です。
また、山中さんは日経ビジネスの編集記者で、新型コロナや原因ウイルスの幅広い知識を聞き出し、日頃の疑問をぶつけ、意見も述べたりして、会話形式でまとめています。新型コロナ時代にふさわしく、インタビューは対面でなく、双方が米国と日本の自宅にいてネットを通じて行われました。
峰さんは新型コロナなど呼吸器感染症の予防法リストを示しています。一番重要なのが「栄養と睡眠をしっかりとる」こと。以下「手指衛生の徹底」「咳エチケット」「3密を避ける」「マスクの着用」などです。日本の専門家対策会議が出した「3密」(密閉・密集・密接)は、密閉空間に長時間滞留する飛沫を避けることに相当するとして、峰さんは高く評価しています。世界保健機関(WHO)が同様の「3C」を打ち出すなど各国が追随しているそうです。
「有効率9割」が示すこと
生、不活化、成分の「3兄弟」だったワクチンは、技術の進歩で人間にウイルス成分を作らせる「核酸ワクチン」(遺伝子ワクチン)が登場してきました。新型コロナで初めて実用化されます。有効との試験結果に期待は高いとしながらも、やはり問題はADEや副反応。日本は先進国では最もワクチン不信感の強い国ですから、峰さんは、副反応で死者が出た場合などの反応を心配しています。
「ワクチンの有効率が9割」の報道は、ウイルスに接しても接種者の9割が感染しないとの意味ではないことを峰さんは繰り返し説明します。自然に生活して非接種者集団の感染者が10人の時に接種者集団が1人、ですよと。
PCR検査も誤解が多いと指摘します。陽性者を正しく判定できるのは70%で、30%が陰性になります。逆に陰性者の1%が陽性と判定され、間違って隔離されることになります。PCR検査は疑わしい患者の確定診断に有用ですが、感染者を見つけるスクーリーニング検査には不適だとの説明は説得力があります。
世の中には間違いや独自論、きめつけ、不確実な情報があふれています。偉い人や専門家の言やメディアが正しいとはいえません。公的情報も含めた複数の情報を比較検討し、咀嚼し、行動すべしというのが峰さんのまとめのようです。