イラン国軍と革命防衛隊の微妙な関係

また、イランのロウハニ大統領と、その直属部隊であるイラン国軍の存在もあります。イラン国軍とイラン革命防衛隊は、共に協力してイランの国を守る軍隊でありながら、決して一枚岩ではありません。

イラン革命の精神に心酔する志願兵で構成されたイラン革命防衛隊とは違い、イラン国軍は徴兵された一般国民で組織されています。イラン革命を誇りに思ってはいても、そのために殉教したいとまでは思っていません。むしろ経済制裁が解除されて、国民生活が豊かになることを望んでいます。アメリカを挑発するようなコッズ部隊の動きは、はっきり言って迷惑なのです。

「死者ゼロの報復攻撃」の不思議

コッズ部隊の暴走を疎ましく思う人たちが、イラン政権内にもたくさんいたことは、ソレイマニ司令官が殺害された後のイランの動きを見ても明らかです。

ハメネイ師が「アメリカへの報復」を宣言すると、イランからイラクの米軍基地に向けてミサイルが撃ち込まれました。ミサイル16発のうち12発が米軍基地に落ちたものの、ヘリコプター1機が損傷しただけで、犠牲者はゼロ。これは奇妙です。

おそらくイラン側は事前に「どこどこにミサイルを撃ち込むから逃げたほうがいい」と米軍側に通告していたのでしょう。「国民の怒りが収まらないからミサイルを撃ち込むけれど、アメリカと本気でやり合う気はないから」と伝えていたのでしょう。つまり、完璧なヤラセです。

その証拠に、イランからのミサイル攻撃に対して、トランプ大統領の反応は拍子抜けするほど冷静でした。「アメリカは反撃しない」――それでおしまいです。

トランプ大統領は、実に喧嘩上手です。ギリギリまで緊張を高めておいて、衝突寸前でサッと身を引く。殴り掛かるふりをして、拳を引っ込める。彼は北朝鮮に対してもまったく同じやり方をしています。殴り掛からないとまともに話を聞かない相手には、思いっきり拳を振り上げる。そして、殴るふりをして、引くのです。

ソレイマニ司令官の殺害に関して、「アメリカが戦争をあおっている」とか、「トランプが中東を再び混乱に巻き込んでいる」といった見方がありますが、これらは事実誤認です。「トランプは戦争をあおっている」とお決まりの批判を繰り返すマスメディアや評論家の皆さんは、「喧嘩のやり方」を一度、勉強したほうがいいと思います。

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