「LNGばかりで30年、50年先を見据えた展望が見えない」
「打倒・財閥」に燃え、今や盟主・三菱商事も抜き、業界トップになった伊藤忠を引っ張ってきた岡藤正広会長CEOは、「本当は電力会社や鉄鋼会社と取引がしたかった。しかし、財閥でもなく、大阪の繊維出身と言うこともあって全く相手にされなかった」とかつての苦労を振り返る。
資源・エネルギーといった分野では三井・三菱にかなわないとみた岡藤会長は、経営資源を「個人向けビジネス」に集中し、投資先への経営チェックを強めながら、利益をコツコツ積み上げていった。
三井を越える最大財閥の三菱商事は同じエネルギー分野でも、石油やLNGから、オランダの電力会社であるエネコへの5000億円の買収で再生エネルギー事業へのシフトを急ぎ、「脱・炭素」への種まきを急いでいる。ローソンを核に顧客データを吸い上げ、傘下の三菱食品や物流会社などとデータを共用するなど連携して、BtoC分野の深堀りを進めている。
三井物産は「強いところは伸ばす」(安永社長)と言うが、投資先も「LNGのプロジェクトに集中するばかりで、30年、50年先を見据えた展望が見えない」(大手証券アナリスト)と分析されている。
次期社長となる堀氏は「中途半端な」(同アナリスト)三井物産をどう特長づけるのか。体質転換や構造改革が再び後手に回るようだと、昨年夏、大手商社5社に同時に投資した「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏から三井物産は最初に見切られるかもしれない。