感染症の予防にはなにが有効なのか。医師の堀田修氏は「普通のうがいでは十分にウィルスを洗い流せないため、あまり効果的ではない。新型コロナやインフルエンザに効果的なのは、鼻の奥にある上咽頭を洗浄できる鼻うがいだ」という——。

※本稿は、堀田修『ウイルスを寄せつけない!痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

インフルエンザ
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「のどの痛み」の原因は鼻にある

風邪のひき始めの症状に「のどの痛み」はつきものですが、この「のどの痛み」は、扁桃腺の炎症によるものと考えている人が多いようです。けれど、IgA腎症(腎臓の糸球体に免疫グロブリンというたんぱく質が沈着する病気)の治療のために、すでに扁桃を摘出した患者さんから「扁桃を取ったのに風邪をひいたらのどが痛いです。なぜですか?」と質問を受けることがしばしばありました。

風邪でのどが痛くても扁桃に炎症があることはまれで、口の中を丹念に診察しても痛い場所を見つけられないことがほとんどです。そんなとき医師は「のどがちょっと赤いですね」などとあいまいな説明をしたりします。それでは扁桃に炎症がないのに、なぜのどの痛みが起きるのでしょうか。

この「のどの痛み」とは、「上咽頭」の炎症による痛みなのです。「上咽頭」はどこにあるのかというと鼻の奥の部分です。口蓋垂(のどちんこ)の裏にあたる位置なので、自分で確認することはできません。上咽頭は左右の鼻から入ってきた空気が鼻腔を抜けて合流し、下向きに方向を変える場所です。空気の滞留が生じて常に湿っているため、ウイルスに感染しやすいといえいます。

上咽頭には多くの免疫細胞が存在していて、外から入ってきたウイルスを撃退する働きがあります。そのため、上咽頭は炎症を起こしやすく、炎症の影響によってのどの痛みや咳、発熱などの風邪のさまざまな症状が現れます。