DHCのメッセージに欠けていた「差別主義者への配慮」

ここで冒頭に挙げた、DHCの例に戻ろう。

DHCはこの文章を掲示したことで、実際に在日朝鮮人・韓国人に差別意識をもつ人からも避けられる製品になってしまった。なぜなら、多くの人は差別意識を隠しておきたいからだ。

反差別は公に表明しやすいが、「人種差別最高!」とは言いづらい。現代日本において、差別意識は存在することすら隠しておきたい本音……インサイトなのだ。

にもかかわらず、DHCはそれを公に掲げてしまった。このまま炎上が続けば、下手をするとDHCを選ぶだけで「あの人ってもしかして……」と言われるリスクすら抱えてしまう。

仮にDHCが差別主義者をファンに加えたいなら、何重にもオブラートに包んだ表現が求められていた。「日本を愛する心を胸に、日本の健康を支えたい」くらいが、相応の表現だっただろう。

しかし、DHCもまた、オブラートに包まないメッセージを届けてしまった。しかもそれは、消費者が隠したいインサイトだった。そのため、ナイキ以上にファンを失う結果になってしまったと考えられる。

尖っていてもファンを獲得できる広告は作れる

差別を扱う表現は、とてもセンシティブだ。だが、炎上するからといって差別問題から目を背ける広告ばかりが世に出るのも、これまた臭い物にふたをするだけだろう。

マーケティングのインサイトにまつわる概念がもっと広まっていれば、どんな主義主張であれファンを獲得する広告は作れたはずだ。

インサイトを的確に刺せば、ものは売れ、ファンは増える。この騒動をきっかけに日本市場を担当する社員のマーケティング・スキルが磨かれ、日本により尖った、そのうえで燃やされない広告が増えることに期待したい

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