商品をうまく売るにはコツがある。マーケティング戦略のコンサルタントである楠本和矢氏は「これからのマーケティングには行動経済学の知見が欠かせない。行動経済学を使えば、ニーズ自体を新たに創り出すことも簡単にできる」という——。(第2回/全2回)
※本稿は、楠本和矢『トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。
「心のスキ」を突くマーケティング
行動経済学の基本的な考え方を踏まえ、各理論からマーケティング施策アイデアを創発するための切り口をご紹介します。
切り口の導出に関しては、理論として、マーケティング戦術に転用可能と想定されるものを選定し、それぞれの理論を活用している(または結果として活用している)と考えられる様々な事例と合わせ、できるだけ直感的にわかりやすいものにまとめたつもりです。
そのなかでも、「新たなニーズを創り出すため」の2つの切り口をご紹介します。
今や全ての市場は成熟化が進んでいます。多種多様な商品/サービスが溢れかえり、生活者の欲求もかなり細かいレベルで満たされている中、調査等を通じて、まだ手つかずのニーズを探し当てるというのは至難の業です。
そんな難しい時代を突破していくためには、「ニーズ自体を新たに創り出す」「ニーズがあったように思わせる」ようなアプローチを検討する以外にありません。現代マーケティングの最重要課題といっても過言ではないでしょう。こんな時こそ、「心のスキを突く」行動経済学の出番です。
時間をかけ、じっくりとニーズを育てていく正攻法ではなく、できるだけ一発でそう思わせることを狙います。