腸内細菌が「脳腸相関」に大きく関与

さらに脳腸相関には、腸内に住みつく「腸内細菌」が大きく関与していることがわかってきました。現在では、「脳と腸と腸内細菌」の三つが相関関係にある、という考え方が浸透してきています。

「脳と腸と腸内細菌」の三つに相関関係があることを証明した研究があります。実験では、体内に腸内細菌をはじめとするすべての微生物が存在しない無菌マウスと通常のマウスを使って、どちらのマウスがストレスに強いかを比較しました。

実験結果は、無菌マウスのほうが腸内細菌を持つマウスに比べて、ストレスを感じやすく、脳の神経系の発達が遅いことが判明しました。その後、無菌マウスに腸内細菌を移植すると、多動などの不安行動が減ったということです。

腸内細菌は、ストレスを抑え、脳の発達にも大いに関連していることがわかりました。今や脳腸相関を考えるうえでは、腸内細菌の存在なしには語れないのです。

1000種類以上の微生物がつくる腸内の「生態系」

人の腸内には、1000種類以上の多様な細菌が棲息しています。その数は、なんと100兆個以上。これらは腸内細菌と呼ばれ、個々の菌が集まって複雑な微生物生態系をつくっています。この微生物群集を「腸内フローラ」といいます。

腸内フローラを整えることは、心と身体の健康に欠かせません。そして、この腸内フローラ、構成する細菌は多種多様なのですが、大きく分けると次の三つに分類できます。

「善玉菌」:代表的なのは、ビフィズス菌や乳酸菌。腸の消化吸収や免疫力を上げる働きがあり、有害物質を体外へ排出してくれる。
「悪玉菌」:代表的な菌は、ウェルシュ菌・ブドウ球菌・大腸菌で、腸内に有害物質をつくり出す。悪玉菌が増えると、便秘や下痢を引き起こし、心と身体の調子が悪くなる。
「日和見菌」:代表的なものは、バクテロイデス・大腸菌(無毒株)・連鎖球菌。善玉菌にも悪玉菌にも属さず、優勢な(多い)菌に味方する。身体が弱ると、腸内で悪い働きをする。