予測可能性とともに困難も増す
まず、第一に想定できることとして、すでに述べたように、長年、米上院外交委員会で委員長を務めてきたバイデンが大統領の座に就くことで、日本を含めた世界の主要国にとって、外交はより予測可能性が高いものとなり、国際協調もより容易なものとなるであろう。
それは日本にとっても、国際社会にとっても、歓迎すべきことであろう。よりリベラルな性質が色濃かったオバマ政権時の外交と比べても、バイデン政権の外交はより現実主義的で、軍事力の重要性を強く理解したものとなりそうだ。
第二には、これとは矛盾する見方とも言えるが、日米同盟はこれから、これまでにない困難に直面することになるであろう。そして第三に、それらを前提として、日本は新しい戦略や新しい思考が求められるようになるであろう。そのような思考の準備がなければ、日本はきわめて困難な立場に立たされることになる。
その理由を、以下に述べていきたい。
日米とも基本的には前政権の方針を踏襲
今年の夏から冬にかけて日米両国で首脳が交代することからも、今後の日米関係の在り方についてさまざまな見解が見られる。日本では、2012年12月以降首相の座にあった安倍晋三氏が辞任をして、その後継となった菅義偉首相は前政権の方針を基本的には踏襲して、外交における継続性を示している。これは好ましいことであり、また賢明な判断と言える。
安倍首相自ら、外交や安全保障政策には多大な関心を示しており、数多くの成果を生み出し海外での安倍外交への評価も高かった。とりわけ、「自由で開かれたインド太平洋」構想と呼ばれる、インド太平洋地域においてルールに基づいた国際秩序の確立を日本が主導していく外交戦略は、国際社会で幅広く支持されている。
他方で、バイデン次期大統領もまた、共和党が多数となっている上院での承認を得るためにも、かつて親中的と評価され、リベラルな外交アジェンダを好むスーザン・ライス氏を、副大統領や国務長官といった重要な役職に就けることを回避した。むしろブリンケン氏やサリバン氏の名前は、対中強硬路線というトランプ政権における外交路線の基調を継続する意向が感じられる。
すなわち、日米両国ともに、基本的には前任者と同様の外交路線を継承することが、大きな方向性として示されたといえる。政治的なレトリックをある程度排除して、その本質に目を向けるならば、「Uターン」のような急進的な変化はおそらく見られないのではないか。