アメリカの外交政策はバイデン政権への移行で、現実的な国際協調路線への回帰が期待されている。だが慶應義塾大学の細谷雄一教授は「コミュニケーションは改善されるが、同盟国により大きな役割分担を求めてくることが予想される」と分析する——。(前編/全2回)
デラウェア州ウィルミントンで演説するジョー・バイデン次期大統領(2020年11月24日)
写真=AFP/時事通信フォト
デラウェア州ウィルミントンで演説するジョー・バイデン次期大統領(2020年11月24日)

安堵感が広がった外交・安全保障人事

現地時間11月23日、ジョー・バイデン次期大統領の政権移行チームが国務長官などの重要閣僚の候補を発表すると、日本の安全保障専門家の間では安堵感が広がった。というのも、トニー・ブリンケン氏が国務長官として、そしてジェイク・サリバン氏が国家安全保障担当の大統領補佐官として名前が上がったからだ。

まだ確定していないが、国防長官には、元中央軍司令官のロイド・オースティン氏を起用する方針が固まっている。バイデン政権の対外政策は、これらの名前を見る限り、日米関係をこれまで通り重視する路線を継続することになるであろう。

これらバイデン政権の外交・安全保障政策を動かす重要閣僚はオバマ前政権時にも要職を占めており、また対中政策について日本政府とおおよそ同様の認識を有している。

中国との「新型大国関係」を摸索して対中宥和派とされていたスーザン・ライス氏とは異なり、より現実主義的な路線をとることが想定されている。だとすれば、バイデン政権において極端に対中宥和的なアジア政策へと転換していく可能性はあまり大きくはない。

アメリカのアジア政策はどう変わるのか

それでは、来年1月20日に成立するバイデン民主党政権に向けて、日本はどのような外交を示すべきだろうか。はたして、アメリカのアジア政策はどのように変わっていくのか、あるいは変わらないのか。バイデン新政権の対外政策は、どのような性質のものとなるのだろうか。

まだまだ情勢が流動的で、そのような展望をするには時期尚早ではある。だが、最近の動向を視野に入れていくつかのことを想定することが可能であろう。