従来のやり方をすべて覆した選挙運動
【川久保】選挙に向けた準備については、とにかく投票日まで3カ月しかなかったので、まずは自分の政策をパワポ30枚ほどにまとめて、それから政治活動用のウェブサイトを立ち上げました。政策の大きな柱は、「子育て中の当事者として子育て支援制度・教育環境を改善する」「弁護士のスキルを生かして市民が抱える問題をともに解決する」の2つ。
加えて、活動の方針として、(A)仕事と育児を犠牲にしない(B)他人のお金に頼らない(C)既存のやり方にとらわれない、の3つを宣言しました。後は本当に、走りながら決めていったというのが正直なところです。
【申】さらには「後援会なし、組織票なし、辻立ちなし、選挙カーなし」と、従来型のドブ板選挙もまったく行いませんでしたね。
【川久保】街を変えたいと思っている人は少なくないはずなのに、実際に立候補するのは地域の名士みたいな方々が大半ですよね。なぜ一般の人が立候補しないのか考えた時、「後援会や辻立ち、選挙カーなどがネックになっているのでは」と思ったんです。
女性であり子育て真っ最中の私が、それらを全部せずに、3つの方針を貫いて当選すれば、ほかの人に「自分にもできるんじゃないか」と思ってもらえるかもしれない。街を変えたいと思う人が気軽に選挙にチャレンジできる──。私は、つくばをそんな街にしたいんです。4年後の市議会議員選挙では、そういう人にどんどん出てきてほしいです。
辻立ちも選挙カーも、「やりたくないこと」はやらない
【申】誰もが政治参画しやすい環境をつくるために、自らロールモデルとなってチャレンジする。その志に感動しました。「自分の行動が、社会にどんなインパクトを与えるか」までを考える人は少ないと思います。女性の一人として、また研究者としても心を打たれました。
【川久保】ありがとうございます。一般の人の政治参画には、まず「仕事と育児を犠牲にしない」が絶対条件だと思いました。そこで、子どもが寝ている早朝の時間帯や、子どもを保育所に預けている平日日中の仕事の合間にできる活動だけを行いました。土日は子どもとの時間を最優先し、お散歩を兼ねてゴミ拾いするという程度のことしかしていませんでした。
次に「他人のお金に頼らない」は、誰かにお金を出してもらうと、先々その人の意に沿った行動をしなければならなくなるリスクがあるから。そんなリスクは負いたくないので、自分の貯金の範囲内でできるように工夫しました。
3つめの「既存のやり方にとらわれない」は、一般の人がやりたくないと思うだろうことはやらないという意味です。辻立ちも選挙カーでの街宣も正直やりたいという気持ちにはなれませんでしたし、有権者の視点で見るとあまり効果的とは思えませんでした。それをしなくても当選できるんだったら、立候補へのハードルはかなり下がるのではと思います。