「前と同じやり方では地域を変えられない」
【申】仕事が忙しいから保育所に預けているのに、預けたら預けたで母親の負担が大きいわけですね。千代田区とつくば市では、働く女性と主婦層の比率も違うでしょうから、母親の役割への期待値もまた違うのかもしれません。
ただ、制度を変えたいと思った場合、議員や役所に要望書を出したり、署名活動をしたりする方法もありますよね。なぜ議員になろうと思ったのでしょうか。
【川久保】実は10年ほど前、そうした社会活動をした時にうまくいかなかったんです。自分がつくば市内で痴漢被害にあったので、危ない場所を市民に向けて発信しようとしたのですが、市議会議員も市役所も県警もあまり協力的ではなく、中途半端に終わってしまいました。このときの苦い経験から「前と同じやり方をしても地域は変えられない、でも議員になれば変える力を持てるかも」と思ったんです。
【申】女性が政治に関心を持つきっかけとして一番多いのは、20代では性暴力、30代では育児負担への問題意識からという印象を受けます。どちらも、掘り下げて考えていくうちに政治の問題に行き着くからでしょう。川久保さんは両方に当てはまっていますから、まさに議員になる運命だったのかもしれませんね。
【川久保】そんな傾向があるなんてびっくりです。まさに私のケースですね(笑)。育児負担については、ひと昔前までは女性は出産したら退職するのが主流でしたが、今は子育てをしながら働き続ける女性もたくさんいます。でも、つくば市は「子育てしやすい街」をアピールしていて公園などのハード面は整っているのに、制度の面では時代の流れに取り残されたまま。そこに対しては声を上げていくべきだと思っています。
【申】つくば市は転入者が多いですから、子育て世帯も増えているはず。なのに制度が遅れているということは、専業主婦やパートの女性、つまり子育てにある程度時間をとれる女性が多いからなのかもしれませんね。
【川久保】確かに、フルタイム勤務よりゆとりのある働き方をしている、祖父母が近くに住んでいてサポートを得やすいといった女性が比較的多いですね。ただ、最近は都内に通勤する人も増えているので、ギリギリの状態で時間をやりくりしている人も少なくないように思います。
【申】そうした、仕事と子育ての両立に奮闘している人たちが、川久保さんの支持層になったのではないでしょうか。しかも、選挙運動の手法もとても斬新で、若者や女性たちに「自分にもできるかも」と思わせてくれました。