コロナ禍で今冬のボーナスは「出るだけまし」との嘆きの声もある。多くの企業は前年比大幅減だ。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「自社の将来展望が見えず、在宅勤務で帰属意識が薄れたこともあり、ボーナスを受け取った後に辞め、転職する人が急増する可能性がある」という——。
ボーナスカットのイメージ
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今冬のボーナスは前年比10%減「リーマンショックを超える減少幅」

今冬のボーナスは、歴史に残る最悪の低さとなる公算が大きい。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、一人あたりの平均支給額は34万7800円、前年比マイナス10.7%と、リーマンショックを超える減少幅を記録すると予測する(11月9日)。

第一生命経済研究所もボーナスの支給がない労働者を含めた平均では前年比マイナス11.5%と予測し、こちらも記録的なマイナスだ。

最大の要因はコロナ禍の業績不振だが、固定給の月給と違い、ボーナスは業績の影響を直接受ける。すでに2021年度赤字決算予想のANAやJTBはボーナスゼロを打ち出している。日本航空も前年の給与の2.5カ月から0.5カ月に引き下げる。

オリンピック関連の案件が軒並み延期・中止になり、上半期赤字決算となった広告会社の人事部長はこう語る。

「下半期から固定費額の大きい採用費、広告宣伝費、交際費などの削減を実施している。しかし、それだけでは追いつかず人件費削減は避けられない。雇用を確保するという条件でボーナスカットを労働組合に提案し、交渉している」

労働組合の中央組織・連合の冬のボーナス交渉(11月30日時点回答集計)では、平均支給額は約62万4000円。昨冬の約68万3000円から6万円も下がっている。業種別では製造業、商業流通、交通運輸、情報・出版など軒並み前年比ダウンとなっている。

日本の企業の大多数を占める中小企業の半分近くは「ボーナスゼロ」

それでも出るだけましだ。日本の企業の9割以上を占める中小企業はもっと悲惨だ。

大阪シティ信用金庫が1016社の中小企業の調査した結果(11月19日)によると、ボーナスを支給する企業は前年比11.2%減の54.0%。支給しない企業は46.0%と半分近い。支給企業割合はリーマンショック後のマイナス9.1%を上回り、この調査を開始した1998年以来、最大の減少幅となった。

中小企業に限定しなくても「不支給」は少なくない。

エン・ジャパンの「2020年冬季賞与」実態調査(1263社)によると、ボーナス支給予定の企業は66%、支給予定がない企業は34%だった。

業種別では支給予定なしが最も多いのはマスコミ・広告の65%、次いでサービス業の51%だ。驚いたのは、コロナ禍のテレワーク需要などで好調とされるIT・通信・インターネット業が39%と3番目に多いことだ。好調な業界でも明暗が分かれているということか。