自力で恋愛結婚している層はほぼ減っていない
婚姻数が減ったのは、若者が恋愛しなくなったからと結論づけたい人もいるようですが、それも関係ありません。恋愛と結婚は別です。次に示すグラフは、婚姻数(初婚)と社会的なお膳立てに頼らず自力で恋愛結婚した夫婦の数を表したものです。初婚数は人口動態調査から、自力恋愛結婚数は、出生動向基本調査の「夫婦の知り合ったきっかけ」の中から、「お見合い・結婚相談所」と「職場での出会い」を除いたもので独自に算出したものです。
これを見れば一目瞭然。初婚数は最盛期だった1970年代の半分まで激減していますが、「自力による恋愛結婚数」は1970年代以降現代までそれほど減少していません。実質この50年間、お膳立てによらず自力で恋愛し、結婚する層は一定数いるといえます。
「若者の恋愛離れ」にすり替えてはいけない
婚姻数が減った原因とは、見合いと職場婚という社会的な結婚お膳立てシステムの崩壊によるものであり、草食化や恋愛離れなどという若者の意識の問題ではないと解釈すべきです。
ちなみに、なぜお見合いだけでなく「職場での出会い」も除くかというと、そもそも日本の戦後の結婚ブームを支えていたのがまさにこの「職場結婚」だったからです。今では問題視されますが、当時の企業は男性社員の結婚相手候補として女性社員の採用を考えていました。当時は「腰掛けOL」を経て「寿退社」するのが典型的な女性のルートでした。結婚式の仲人はほぼ会社の上司が担当しました。
その職場結婚も現在は激減しています。きっかけは1997年のセクハラ裁判と言われています。企業も男性自身も、職場で付き合うということがリスクに変わってしまったのです。
もちろん、職場での出会いにおいても純粋な自力恋愛結婚もあったと思いますが、従来のお見合いに代わって職場縁という新たな社会的お膳立てが結婚減少を穴埋めしてきたのが70~80年代の姿です。
少子化の問題は、基本的には非婚化の問題であり、結婚する人が少なくなればなるほど自動的に出生数は減ります。かといって、今更、昭和の結婚お膳立てシステムに回帰することはできないでしょう。何より問題の根源を若者の意識にすり替えるのはやめていただきたいと思います。
それは、おじさんの留飲を下げるだけで何の問題解決にもなりません。今のアラカン世代もその上の80代の世代も、少なくともその7割は自分たちの恋愛力によって結婚できたわけではないのですから。